米国人講師4人はなぜ中国で刺されたか?吉林省の公園で白昼に襲撃、当局は偶発事件として処理するが背景を探ると…
■ 日本人も狙われる可能性 果たして、この事件が偶発的、通り魔的事件なのか、計画された米国人を狙った事件なのか。あるいは米国人を狙ったとして、中国人の排外主義情緒の高まりを反映しているのか、あるいは現体制、社会への不満表明をより注目させるために外国人を巻き込んだのか、あるいは習近平政権による米国人の安全を人質にとった一種の脅しなのか。 いずれにしても、重要なのは、中国社会は不安定化し、人心が荒れ始めている、ということだ。 経済悪化、若者の失業率上昇、賃金カット、デフレ経済の一方で、水道電気ガス食品などの生活物価上昇という生活苦の問題が深刻化している。社会報復性テロ事件だけでなく、「跳橋」「跳楼」と表現される飛び降り自殺が二線、三線都市で毎日のように起きている。 一方で、習近平政権は、人民の不満や怒りが自分の方に向かわないように、反スパイ法を改正し、外国敵視へ世論を誘導することで、党と自分への求心力や忠誠を強化しようとしている。でも実は、習近平自身が米国で蓄財をしてきた。 この矛盾、ひずみの中で、今回のような事件が起きたわけだが、これは決して一過性の事件で終わらない。真の要因が中国社会の問題にあるなら、あるいは習近平政権の政治に原因があるなら、それが変わらない限り、また同じような事件が起こりうるだろう。 そのとき被害者になるのは、必ずしも米国人とは限らない。日本人も、人民の不満や怒りの矛先が向かいやすい対象であることを忘れないでほしい。 福島 香織(ふくしま・かおり):ジャーナリスト 大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。おもに中国の政治経済社会をテーマに取材。主な著書に『なぜ中国は台湾を併合できないのか』(PHP研究所、2023)、『習近平「独裁新時代」崩壊のカウントダウン』(かや書房、2023)など。
福島 香織