米国人講師4人はなぜ中国で刺されたか?吉林省の公園で白昼に襲撃、当局は偶発事件として処理するが背景を探ると…
■ 本当に「偶発事件」なのか? 吉林市公安当局はこの事件を偶発事件としている。ただ、この崔容疑者は黒ずくめの服装で刃物を用意しており、明らかに米国人を狙った様子であったという目撃情報もあり、ネット上では外国人を狙った犯行ではないか、と噂になった。 中国ではこの事件はほとんど報じられず、当局が一刻も早くこの事件を沈静化しようとしていることがうかがえる。果たして、この事件は突発的偶発的な個別の事件にすぎないのか、それとも何か背景があるのだろうか。 在米華人評論家の蔡慎坤はXで、この事件を「義和団によく似た事件」と表現して背後に中国人愛国者の排外主義的心情が関与する可能性を見ているようだった。彼は「犯人はおそらく米国人をターゲットに攻撃を行ったのだろう」と指摘。その他のネット民も今回の事件と中国の洗脳教育の関与を疑っている。 安徽省の元検察官の沈良慶はラジオフリーアジアに対するコメントで「容疑者の社会背景や動機はまだはっきりしていないが、襲った相手は特定の(外国人)身分であり、これまで(中国で)あったような無差別攻撃とは異なる」と指摘。結論を出すのは時期尚早としながらも、昨今の米中対立先鋭化によって急増する中国人の排外主義感情、反米感情と関係ある可能性を含ませていた。
■ 米国を敵視する習近平のプロパガンダの影響か 実は中国では近年、こうした社会報復性の無差別襲撃事件は増えている。たとえば今年3月に広東省広州市と山東省徳州市で、車でわざと無差別に何人もの人をはねる事件が起きている。このうち徳州市の事件では、小学校の校門前で生徒たちがターゲットにされ少なくとも2人が死亡した。 犯人は経済悪化や失業への不満や鬱屈から、社会を恨み、社会に報復するような形で無差別テロを行うのだ。彼らは、政治組織や宗教組織に属していたり、誰かの司令を受けていたりしたわけではない、ローンウルフタイプの犯罪者だ。 ただ、一般的にはその不満や怒りは、自分より弱い社会弱者に向けて発散されることが多かった。今回のように外国人男性が襲われるのは、むしろ珍しい。少なくとも改革開放以降、習近平政権が始まる前は、中国政府は国際社会に対する体面もあって犯罪から外国人を保護することに力を入れていた。中国人が被害者となる犯罪より外国人が被害者となる犯罪の方が捜査や解決が真剣であったり、処罰が厳しかったりした。 ただ習近平政権になって、中国と米国、西側自由主義国家との対立関係が先鋭化し、中国人民の反米感情は1999年の「ユーゴスラビア中国大使館誤爆事件」以降、最悪になっている。習近平政権は経済悪化や統制強化により増大した社会不満、不安の矛先が習近平自身や党中央に向かうことを避けるために、米国など外国に敵意を向けるようにプロパガンダを展開し、世論誘導しているからだ。 こうしたプロパガンダ、洗脳の影響で、社会報復性テロのターゲットに米国人、あるいは外国人が狙われるようになったのではないか、というわけだ。