棟方志功、戦前の大作 福光美術館(富山)で「東北経鬼門譜」公開
富山県南砺市福光地域ゆかりの板画家、棟方志功が凶作に苦しむ東北地方の救済を祈り制作した「東北経鬼門譜(とうほくきょうきもんふ)」(1937年)の板画120枚が、同市福光美術館の常設展で紹介されている。表装する前の状態で、6曲1双屏風(びょうぶ)に仕立てると縦1・2メートル、幅10メートルとなり、棟方が戦前に手がけた作品では最大となる。表装前の板画が展示されるのは珍しく、同館は「最初で最後の機会になるかもしれない。ぜひ多くの人に見に来てほしい」と話す。 東北経鬼門譜は、青森出身の棟方が飢饉(ききん)に苦しむ東北の惨状に思いをはせ、祈りを込めて表現した作品。南砺市が昨年秋に購入した。 120枚の板画を縦に5枚、横に24枚並べると、幅10メートルに及ぶ圧巻のスケールとなる。両端には、貧困で生まれ得なかった子どもを黒く塗りつぶしたように表現し、中央には鬼門仏(きもんぶつ)を右隻と左隻にまたがる形で配した。鬼門仏自らが身を割り、東北の民を救うという意味が込められている。
今回は、表装する際にカットする余白を残したままの状態で、10枚ずつ束にして展示した。板画の並べる位置を示した棟方の指示書や、日本民藝館が屏風として所蔵する東北経鬼門譜の4分の1サイズのレプリカも並べている。 高島裕学芸員は「表装すれば、棟方が自ら刷り、束ねて指示書を書いた手の跡が見られなくなるので、ぜひこの機会に鑑賞してほしい」と話した。11月30日まで。