【高校サッカー選手権】夏の全国8強の桐光学園が鎌倉のチーム力に大苦戦。終盤の2得点で辛くも準々決勝へ進出
10月20日、第103回全国高校サッカー選手権神奈川予選2次予選・3回戦が行われた。この試合が初戦となったインターハイ全国8強の桐光学園が鎌倉と対戦し2-0で勝利を収め、準々決勝進出を決めた。 【フォトギャラリー】桐光学園 vs 鎌倉 試合終了を告げるホイッスルと共にピッチに崩れ落ちた鎌倉の選手たち。大粒の悔し涙を流す選手たちを見つめ、鎌倉・古澤大暉監督は自らの目にも光るものを浮かべながら「ずっと桐光戦に向けて準備してきたんで、本当に選手たちが頑張ってやってくれたなと思っています」と選手を労った。 この試合が初戦となる桐光学園は、立ち上がりから激しくハイプレスをかけボールを奪うと長短のパスとセットプレーから次々と鎌倉ゴールを襲う。16分には左サイドからのCKをDF2杉野太一が繋いだボールをDF4青谷舜が狙うが枠を捉えることができない。21分にはDF19 田中智也の縦パスをFW9丸茂晴翔が左へ叩いたボールをMF13五十嵐翔がシュートに持ち込むが鎌倉DFも身体を張ってブロックしゴールを割らせない。 これに対し鎌倉は個のスピードと技術では劣るものの高いチーム力で対応すると前半、風上に立ったこと優位を活かしカウンターから反撃、3本のFKからゴールを目指すが決定打にはならず。0-0のまま、勝負は後半に持ち越される。 ハーフタイムに鈴木勝大監督からひときわ大きな声で「強度、切り替え、運動量は、お前たちの生命線。それをもっと出して戦って来い」と鼓舞された桐光学園イレブンは、前半以上に激しく鎌倉ゴールに迫る。49分にはCKから青谷が頭で、51分には混戦から右サイドに持ち出した五十嵐が右足で、そして52分には右サイドからDF3武山陽介の折り返しに丸茂が飛び込み頭でゴールをこじ開けにかかるが、いずれも枠を捉えることができない。対する鎌倉は前半終了間際の時間帯にFW10小島和也を投入したことで、後半は立ち上がりからボールも繋がり出しカウンターに鋭さが増したことで徐々に流れを掴み始める。 しかし、71分、鎌倉は自陣PAで痛恨のハンドを犯しPKを献上。桐光学園はキッカーの丸茂が落ち着いてこのPKを沈め、ようやく先制点を上げる。 何とか振り出しに戻したい鎌倉も必死に前へとボールを運ぼうとするが、リードしたことで余裕の生まれた桐光学園の分厚い守備を崩すことができない。逆にアディショナルタイムに与えたCKから青谷にヘディングで追加点を決められ、直後に終了のホイッスル。鎌倉の揺るぎないチーム力に苦戦したものの桐光学園が2-0と貫禄を見せ準々決勝を決めた。 試合後、およそ30分に及ぶミーティングで選手と向き合った鈴木監督は「ゼロ、ゼロでした。勝ったことだけが唯一のことで」と前置きすると「技術、戦術もそうなんですが、やっぱり初戦ですし、そういう中で彼らも何とかやろうと思ってはいましたが、やはり一週間の準備であったり、1つ1つのプレーであったり、そういうものの歯車があってないので、精神的に安定しないゲームになったんじゃないかなと思っていますし、それが選手権だと思っています」と試合を分析した。続けて「うちは2年連続出場権を獲得できていないので、挑戦者ですし、そういう中でこの選手権の神奈川県代表を取ること、簡単ではないですけど、それにターゲットを持って1年間やってきてますので、しっかりとチャレンジしたいなと思っています」と目標を語った。 キャプテンの杉野は「全体的に明るい選手が多いので試合でその明るさをパワーに変えてやっていくのが本来のチームカラーなのですが、今日は全然そういうパワーが足りなかったかなと思います。それでも全体的に硬さがあった中でPKとセットプレー1本取って勝ち切ったっていうのは、今後トーナメントやっていく上では良かったと思います」と苦しい中でも勝ち切れたことをポジティブに捉えていた。そして「来週に向けては、練習の中で自分たちがもっと意識を変えてやっていくしかないと思う。今まで積み重ねてきたものをこの大会に全部ぶつける感じで、チーム力っていうのをもっと高めて準々決勝に入りたいと思います」と抱負を述べた。 大事な場面で確実にPKを決めた丸茂は「予想はしていましたが、やはり少し堅いゲームになってしまいました。前半の0-0は初戦だし、風向きは逆だったのでOKだと思っていましたが、自分がゴールを決めていればみんなの精神的にも良かったと思います。PKは『こういう流れを変えられるのは自分だ』と思っていたいので、自分自身で蹴ると決めていた。キャプテンや青谷も『お前が蹴ろ』と背中を押してくれたので、しっかり気持ち落ち着けて、自信持ってみんなの気持ちを乗せて蹴ることができました」と振り返った。そして「怪我で出れない仲間や応援してくれるみんなに全国の舞台を用意するために、気持ちを出していくのが試合に出ている自分の使命かなと思います。この大会でこれまでの悔しさも含め全て出して、死ぬ気で戦っていきたいです」と決意を新たにした。 (文・写真=西山和広)