スイス製高級腕時計の需要に回復の兆し 中古価格も好転
スイスの時計産業が、注目に値する復興を見せている。スイス時計協会が発表した最新の統計データによると、2024年4月の輸出額は4.5%増加して21億4740万スイスフラン(約3740億円)となった。前月から好転しているものの、年初からの累計輸出額ではまだ2.6%の減少となっている。 興味深いことに、腕時計の輸出個数は120万個と4.2%減少したにもかかわらず、輸出額は4.3%増加しているのだ。つまり、1個あたりの平均価格が上がったということだが、このような高額腕時計が増えている傾向は、高所得者層以外の層が相変わらず高級品の購入に消極的になっている一方で、高所得者層は消費を続けていることを示唆している。 価格が3000スイスフラン(約52万円)以上の腕時計は、金額ベースの輸出が7.8%増であるのに対し、500~3000スイスフランの価格帯の腕時計は10%減少した。500スイスフラン(約8万7000円)以下の腕時計はわずかに1.2%減と依然として比較的安定している。 この統計データには、各主要市場ごとの輸出額とその増減も紹介されている。 ・米国:スイス時計最大のマーケットは、11.6%増の3億3,870万スイスフラン(約589億円) ・中国:主要輸出市場で唯一、7.5%と大幅減少。1億8720万スイスフラン(約330億円) ・日本:主要6市場で最も大きく伸び、13.6%増の1億7210万スイスフラン(約300億円) ・香港:0.2%の微増で横ばい。1億6970万スイスフラン(約295億円) ・シンガポール:こちらも好調で、12.5%増の1億450万スイスフラン(約182億円) ・英国:4.6%増の1億4220万スイスフラン(約247億円)
二次流通市場における高級腕時計の価値も需要の回復を示す
スイス時計の輸出が安定していることは、この産業にとって明るい兆しだ。2022年3月に需要がピークを過ぎてからというもの、スイス時計業界は新たな購入者を惹きつけるのに苦労してきた。可処分所得の減少、インフレとスイスフラン高による継続的な価格上昇、二次流通市場(中古市場)における腕時計の価値の下落が、高級時計の購入者を市場から遠ざける原因となってきた。 高級時計に対する需要が増えていることは、腕時計の販売業者にとっても良い知らせだ。需要の減少に直面している市場に、スイスの時計メーカーが供給を増やすのではないかということが懸念されてきたからだ。この懸念は解消されつつあるように思われる。「スイス時計業界は、24年暦年の予想売上高に対して、全般的により保守的なアプローチを取っている。業界がこの不安定な時期から抜け出す上で、それが正しく、責任ある態度であると、私たちは信じている」と、英国の時計販売業者であるWatches of Switzerland Group(ウォッチェズ・オブ・スイス・グループ)のブライアン・ダフィーCEOは、5月16日の決算発表で語った。 英国を中心に高級時計の販売を営むウォッチェズ・オブ・スイス・グループの株価は、過去1年で32%下落した。しかし、見通しの好転が反映されたことで、5月には前月比26.3%反発した。 二次流通市場における高級腕時計の価値もまた、需要の回復を示している。高級腕時計トップ10ブランドから販売された60モデルの中古価格相場を追跡するWatchChartsのOverall Market Indexは、今年1月から4月まで下落していたが、5月には0.1%上昇に転じた。 腕時計愛好家は、ロレックス、パテック・フィリップ、オーデマ・ピゲなどの高級ブランド時計を生産するスイス時計産業の状況を注視している。次回の統計データは6月20日に発表される。
Garth Friesen