累計出荷100台超え…明電舎の「瞬低」補償装置、引き合い急増のワケ
明電舎の瞬時電圧低下(瞬低)補償装置「MEIPOSS(メイポス)」の引き合いが急増している。落雷が原因で発生する瞬低から設備を守るための装置で2004年に発売し、累計出荷台数が24年9月までに100台を突破。22年度―24年9月までの累積出荷台数は19―21年度と比べて2・3倍に伸長した。瞬低は工場設備に障害をもたらし生産停止や納期遅れなど大きな損失につながる恐れがある。地球温暖化の影響で雷被害が増える中、生産活動を守る装置として今後も拡大が期待される。 瞬低は瞬間的に電圧が低下する現象で、落雷による発生が約8割を占める。自然現象のため発生を防ぐことはできず電力を使う側で対策を取る必要がある。電線に落雷すると雷によって瞬間的に高い電圧が発生し、送電線と鉄塔間がショートし故障電流が流れることで電圧が低下。瞬低は0・07―2秒続くとされる。 22年にはルネサスエレクトロニクスの川尻工場(熊本市)で落雷による瞬低が発生した。同社によると過去10年間で発生した瞬低の電圧低下時間は0・1―0・2秒だったが、22年は0・6秒停止。無停電電源装置(UPS)などの対策を講じていたが、想定を上回る長さで生産設備の約9割が停止する事態となったという。 明電舎のメイポスは瞬低だけでなく短時間停電にも対応する。また蓄電デバイスにリチウムイオンキャパシターを採用することで、小型化と大容量化を実現。装置は15年間交換不要のため、メンテナンス費用を削減できる。 需要増加の背景には、地球温暖化による落雷の多発や国内で建設ラッシュが進む半導体製造工場の影響が大きいと見る。今後、年間20億―30億円の売上高を見込む。 装置価格は数億円するが、機能は瞬低などからの守備のみとなる。これまでは生産現場からの導入希望があっても経営層が検討を延期し、導入に踏み切らない企業が多かったという。 コロナ禍でサプライチェーン(供給網)が分断されたことを教訓に企業の納期順守や歩留まり向上への意識が高まり、そうしたリスク回避のための問い合わせが増えている。