待望のノイキャン&LDAC対応で低域も強化! しかも安くなったfinal「ZE3000 SV」
finalから、新たに登場した完全ワイヤレスイヤフォン「ZE3000 SV」。2022年に登場した「ZE3000」の後継機で、新たにノイズキャンセルと、ハイレゾ相当で再生できるコーデックLDACに対応しながら、前機種よりも3,000円価格を抑えた直販価格12,800円で登場した、実力とコスパともに注目のモデルだ。 【画像】ZE3000(左)、ZE3000 SV(右) サイズを大口径化した、10mm系の独自ドライバー「f-Core SV」を新搭載しており、筐体も有線イヤフォンと同様のアコースティックな音質調整を行なっているそうで、それで何故価格が下がったのか、と不思議に思う進化ぶりに期待が高まる。 外観から見ていくと、前機種はイヤフォンの形状から「耳に当たってしまって痛い」という声もあったそうで、丸みを帯びた形状に大きく変更。ケースも形状がCOTSUBUなどと似たタイプに変更されている。表面加工は引き続きしぼ加工になっており、指紋が目立たなくなっている。 ■ 本当に同じイヤフォンか? 曲によって低域の出方が変わる 前機種ZE3000と比較しながら、ZE3000 SVの音を聴いてみる。今回はPixel 8aとLDACで接続した。 「Midnight Misstion/Midnight Grand Orchestra」を再生してみると、最初のストリングスの部分は前機種とお馴染みのクリアな音がさらに透き通ったような感覚だったのだが、その先の低域がもの凄く深くズウゥーンと沈んでいく。 しかも、量感たっぷりのボワァっとした要素と力強くタイトな要素がしっかりと共存していて、低域だけでも奥行き感を感じられる。それでいて、ボーカルのクリアさもさらに磨きがかかってるのだが、決して耳に痛い音にはなっていない。すいちゃんの力強い歌声がクッキリ耳に届いて気持ちいい。 傾向はドンシャリっぽいのに、もの凄く緻密に調整されているような音という感じで、ギターやピアノの弾き語り曲などでは、この量感のある低域が出てこないのも良いところだ。スッキリとしたいい音だけが再生される。とくにHACHIのBirthday Acoustic Liveの配信曲を聴くと、広い会場にしっとりとした演奏、息づかいまで聴こえる生っぽい声まで心地良く楽しめる。 それでいて、EDM調の楽曲を再生すると「本当に同じイヤフォンか?」と思うくらいすさまじい量感の低域がドッコンドッコン鳴り響く。「唱/Ado」や「AWAKE/星街すいせい」のようなGiga&TeddyLoid作曲の楽曲や、同人とは思えないMVのクオリティも注目の「モエチャッカファイア/弌誠」などは、とくにばっちりハマってテンションをぶち上げられる。 そして、ASMRにこだわったイヤフォンや、ハイエンドヘッドフォンのDシリーズで声にこだわっていることもあって、ZE3000 SVも人の声が非常に心地良く聞こえる。 ドンシャリ傾向のイヤフォンは、ちょうど中域くらいに当たる人の声が引っ込んでしまい、ボーカルが聴き取りにくかったり、女性ボーカルがクリアに聞こえるけどちょっと尖りすぎて耳が痛い、みたいなことがあるのだが、ZE3000 SVは量感たっぷりの低域が響く中から、男性女性関わらずボーカルが浮かび上がってくるように聴き取れる。 他の音に埋もれてしまったり、声の成分がしっかりと再現されないことが多々ある筆者の最推し「猫又おかゆ」の声もZE3000 SVならバッチリだ。前機種でもこの部分がお気に入りだったので、同じままでいてくれて嬉しい。同価格帯の機種で選ぶのであれば即決の音質だと思う。 ■ コスパ最強格の音。LDACでマルチポイントはできないけども…… 欠点をあえて挙げるとすれば、やはり使い勝手の部分になってくる。ノイズキャンセルは備えているものの、音質に悪影響を与えない程度で、周囲の音が1段階程度抑えられるような感覚。その代わりノイキャンの圧迫感もそこまで感じないが、ノイキャン性能に重点を置いている人にとっては満足できるものではないと思う。 そして、LDACコーデックで接続する場合はマルチポイント接続ができない。イヤフォンを耳から外しただけでは再生が続いてしまう(ケースに入れるとスマホ側が判断して停止するような感じ)。このあたりまで完璧でこの値段を実現していたら決定的なのだが、仕方ないところだと思う。しかも正直、価格と音質のメリットがこれらのデメリットを上回っている状態にあると感じる。 しっとりとしたアコースティックライブから、アゲアゲなEDMまで、幅広い表現力でしっかりこなしてしまう、コスパ最強の完全ワイヤレスイヤフォンという印象だ。とくに、ZE3000の音は好きだけど、耳が痛くなってしまったという人はまず試してほしい。
AV Watch,野澤佳悟