推定年俸5億円、34歳のF・トーレスは鳥栖にどんなメリットをもたらすのか?
兵庫県伊丹市で生まれ育ち、大阪・北陽高校ではサッカー部に所属。インターハイを制した経験をもつ竹原社長から、こんな話を聞いたことがある。 「実は大学を卒業していないんですよ。頭が悪くてダメ組で、中退してしまったので。なので、Jリーグでは珍しい高卒の社長になりますね」 24歳で佐賀県に移り、36歳になる年に株式会社ナチュラルライフを設立。九州だけでなく北陸、関西、関東で「らいふ薬局」を展開している。見知らぬ土地で裸一貫の状況から事業を立ち上げ、県外にも乗り出していく過程で計り知れないほどの苦労を強いられたはずだ。 タフな生き様はサガンを運営する株式会社サガン・ドリームスの代表取締役社長に就任した、2011年5月以降の軌跡にも色濃く反映されている。地方の小クラブが毎年のように業績を拡大させてきた理由を、竹原社長は「選択と集中」と説明したことがある。 「クラブの能力的に多くのことはできないので、『これだ』と選択したことに対して徹底的かつ集中的に取り組む。そうした努力をシンプルに積み重ねてきただけです」 今年前半はトーレスの獲得を「選択」し交渉に「集中」した結果として国境や文化、風習を超えて伝わった誠意が大物獲得を実現させた。1年間のオプションつきの1年半契約で、推定年俸は約5億円。長く象徴としてきた「9番」を託されたトーレスは、少なくとも3つのメリットをサガンにもたらす。 まずは前半戦の不振の原因となった得点力不足の解消だ。15試合であげた14ゴールは、リーグでワースト3位タイ。元コロンビア代表FWビクトル・イバルボがコンディション不良だったこともあり、3ゴール以上をマークした選手は誰もいない。 3月で34歳になったトーレスだが、相手の最終ラインの裏へ抜け出すスピードは衰えていない。多彩なフィニッシュのパターンから、昨シーズンも公式戦で10ゴールをマークした。蔚山現代FCへの期限付き移籍から復帰した元日本代表FW豊田陽平とともに、巻き返しへの起爆剤を期待される。