北朝鮮軍のロシアへの派兵は確実に始まっている、派兵実現を急いだロシア・北朝鮮の本気度
その後、韓国の情報機関、国家情報院(国情院)は、北朝鮮が特殊部隊員約1500人を最近ウラジオストクへ移動させたと発表し「北朝鮮が参戦を始めた」との見解を示した。いずれにしても派兵は北朝鮮にとって、初の本格的な対外派兵になる。 ■ロシア極東に1万1000人 筆者が得た情報では、ロシア極東の軍訓練施設で1万1000人規模の北朝鮮軍部隊がすでに訓練を行っていることは確かだ。この部隊に関する詳細な情報をキーウ側は把握ずみだ。
2024年6月に合意した派兵を、その年の秋に開始する――。ロシアは何故、北朝鮮からの派兵をこんなにも急いだのか。狙いははっきりしている。異常に多い戦傷者を出してもお構いなしに、人海突撃戦術を続けるロシア軍としては、先細る一方の兵力補給の緊急対策として、北朝鮮軍兵士で穴埋めすることを目指しているのだ。 現在、ロシア軍は小規模都市を制圧するなどウクライナ東部ドネツク州での攻防で主導権を握っている。しかし一方で、戦傷者の数が記録的水準に達しているのに、モスクワからの補充は逆に次第に少なくなっているのが実情だ。
ウクライナ軍関係者によると、ロシア国防省は最近まで毎月3万~3万5000人の契約兵を補充として全戦線に送ってきた。しかし、2024年10月の前半にドネツクで補充兵としてモスクワから補充として送られてきたのは、わずか1600人余りだったという。だから北朝鮮軍の参戦を喉から手が出るほど望んでいるのだ。 ロシアが北朝鮮側に対し、派兵を要請したのには、直接の契機があった。2024年8月6日のウクライナ軍によるロシア西部クルスク州への越境攻撃だ。不意を突かれたロシア軍は対応に手間取り、空挺部隊などの主力を投入できたのは約1カ月後だった。
こうした苦しい事情を受け、プーチン政権は北朝鮮に派兵を緊急要請したのだ。北朝鮮部隊はわずか約1カ月後に派兵してきた。いかに両国軍部の間で準備ができていたかを示すスピードだ。本稿執筆時点で、クルスク州の占領はすでに3カ月が過ぎ、ロシア軍は奪還のメドが立っていないのが実情だ。 ■クルスクでの任務 このため当面、派兵部隊はクルスクで任務に当たるとみられる。その限りにおいては、派兵部隊は形のうえではロシア領防衛に当たる形になる。プーチン氏は、2024年10月半ば、上記の首脳会談で金総書記と署名した「包括的戦略パートナーシップ条約」を批准手続きのため下院に提出した。この条約は、秘密規定も含め、有事の際の軍事相互支援を規定している。