円安の物価への影響に強い懸念、「守るべきラインない」と鈴木財務相
(ブルームバーグ): 鈴木俊一財務相は8日の衆院財務金融委員会で、円安がもたらす物価への影響に強い懸念を表明した。為替相場の水準に関してはコメントは控えた上で過度な変動は望ましくないとし、引き続き動向をしっかり注視して万全の対応を取ると市場をけん制した。
鈴木財務相は、円安の「輸入物価を押し上げるというマイナス面について私も強い懸念を持っている」と発言。為替相場に「決して守るべきラインというものがあるわけでない」としながらも、急激な変動は望ましくないとし、「取るべきときには適切な対応を取っていきたい」と語った。介入の有無については今後の政府のさまざまな対応に予見を与えかねないため「コメントを控える」と従来の姿勢を繰り返した。
為替相場の動向注視、守るべきラインあるわけではない-財務相
介入を巡り通貨当局は、円相場が34年ぶり安値水準の1ドル=160円台に乗せた4月29日と、米連邦公開市場委員会(FOMC)後の5月2日に円買い介入が実施されたとみられる。当局は介入の有無を明言していないが、過度の変動に適切に対応する考えを繰り返し表明し、円安をけん制。日米金利差を主因に円安基調に変化が見られない中で介入警戒感はくすぶっており、市場は当局の情報発信を注視している。
8日の東京外国為替市場で円は155円台前半で推移。朝方の154円台後半から弱含みで推移している。
為替介入の原資に関して鈴木財務相は、「無限にある」とする神田真人財務官と認識を共有していると説明。「私も今後過度の変動に対し必要な対応をとる上で、介入原資が制約になるとは特段認識をしていない」と語った。介入原資となる日本の外貨準備の外貨は3月末時点で約1.15兆ドル(約178兆円)。このうち米国債などを売却せずに介入に使える外貨預金は1550億ドル保有している。
G7合意
イエレン米財務長官が為替介入に慎重姿勢を示した発言に対して鈴木財務相は、主要7カ国(G7)で「市場における行動に関して緊密に協議をすることに加えて、為替レートの過度な変動や無秩序な動きは、経済および金融の安定に対して悪影響を与え得る」との認識が合意されていると説明。先月のG7財務相・中央銀行総裁会議でも確認したと述べた。