テレビっ子集まれ~!『放送ライブラリー』で電波の旅へ。
松下電器(当時)制作の「トランジスタラジオクーガ115」のCM『母の国の声』(1975年)では、ラジオを聴きながら母を思い涙ぐむ兵士の姿が映し出される。ベトナム戦争を反映した構成で、今やみることのない商品、音楽、時代の景色が映し出され、もはやタイムトラベル。「スキップ」の文字をクリックしたくなるCMの時間だけれど、昔のものとなるとじっくり鑑賞したくなる不思議。
9階は展示フロア。体験型の常設展示と企画展示のコーナーで楽しみながら放送について学ぶことができる。グリーンバックでのアナウンサー体験は世代を問わず人気のコーナー。この日も子どもたちのはしゃぐ声が聞こえてきた。
「放送された番組には、清濁併せ呑むような面があります」と齋藤さんは言う。「感動的なもの、勉強になるものがある一方で、くだらなかったり、時にはPTAから”子どもに見せたくない”と思われてしまうものもあれば、大人になってから当時を思い出す装置となって、多くの人にとっての時代のひとつの共通認識になったりもします。ぜひこの施設を利用して、色んな時代や文化を網羅的に見て、様々な時代精神に触れてもらえたら、きっと世界が広がっていくはずです」
たくさんのコンテンツで溢れている今日この頃。コスパ&タイパを重視していると、自分用にサジェストされた「あなたへのおすすめ」や、世間の話題作ばかりがついつい目につく。忘れられたものに出会ったり、その価値を読み解いたりするような機会は少ない。でも、このような放送アーカイブは長く「かたち」が残っていく文化的資産だからこそ、それに触れてみることはきっと、YouTubeでは味わうことのできない”ものを見る”行為だ。能動的に、体系を追ってより深くディグし、知的好奇心を刺激する電波の旅に出てみれば、「70年前のあれ見た?」なんて不思議な会話が広がるかもしれない。
インフォメーション
放送ライブラリー (公財)放送番組センターが運営。放送法に基づく日本唯一の放送番組専門のアーカイブ施設。過去のテレビ・ラジオ番組、CMなど約3万9000本を無料で公開。ライブラリーで視聴できる番組は事前にネットからも検索できる。映像を中心とした体験型の常設展示のほか、放送に関する様々なイベントを随時開催。展示フロアでは、2月23日(金)~4月7日(日)まで『体験!体感!!テレビ美術のうらおもて』を開催中。 ◯神奈川県横浜市中区日本大通11番地 横浜情報文化センター内 ☎045•222•2828 10:00~17:00(視聴の申込みは閉館30分前まで)月・休(祝日の場合は次の平日)、年末年始 photo: Koh Akazawa, text: Ryoma Uchida, edit: Kosuke Ide
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