神木隆之介『海に眠るダイヤモンド』現代編の主人公の存在意義は?雑すぎる理由にモヤモヤ【ネタバレあり】
現代編の主人公・玲央(神木隆之介)って、いったいなんだったの……? 12月22日(日)に最終話2時間スペシャルが放送された神木隆之介主演の日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)。 【写真あり】最後までみたい10月新ドラマ『海に眠るダイヤモンド』は何位? 1955年から始まった軍艦島(長崎県・端島)を描く過去編と、2018年の東京を描く現代編の2軸でストーリーが進行しており、神木はその2つの時代の主人公を一人二役で演じた。 過去編の主人公・鉄平は端島で生まれ育ち、明るく真っ直ぐな性格。長崎にある高校・大学に進学していたが、卒業後は帰郷して端島の炭鉱業を仕切る大手企業の職員に。故郷を盛り上げていきたいという気持ちを胸に、奮闘していく。 現代編の主人公・玲央は、いまいち人気の出ないホストだったが、端島が故郷だという老婦人・朝子(宮本信子)と出会い、水商売をやめて人生が変わっていく。朝子からは鉄平に顔がそっくりということで気に入られており、端島と鉄平について興味を抱いていく。 ■【ネタバレあり】端島から消えた鉄平のその後は? 最終話では鉄平が端島から消えた理由が明らかになった。 過去編の朝子(杉咲花)にプロポーズしようと呼び出していた鉄平だったが、その晩に、運命が一気に狂ってしまう様子が描かれた。 亡くなった兄・進平(斎藤工)と結婚していたリナ(池田エライザ)、そして2人の間にできた幼子を助けるべく、鉄平はリナと子を連れて端島から脱出していた。 鉄平は兄の犯した殺人を自分の罪として被り、裏社会の人間から命を狙われるようになったため、朝子にプロポーズできぬまま端島を去り、ずっと島に帰れずに逃亡生活を続けていたのだ。 ただ、これは最終話前までの大方の予想どおりで、さほど意外性はなかった。 最終話終盤、けっきょく鉄平は8年前に亡くなっていたことが発覚するのだが、朝子は鉄平が端島を出たあとにどう生き、朝子のことをどう想っていたかを知り、積年の鉄平への気持ちにけじめをつけることができた。 朝子の空想のなかで、 “もしも” の端島が描かれる。進平は生きており、リナと子どもと幸せに暮らしており、鉄平もちゃんと端島にいて朝子にプロポーズする。その全方位でみなが幸せな世界線があったかもしれないというのが、なんとも切なすぎるラストだった。 ■現代編の主人公の意味と物語に、どうにもモヤモヤ 過去編で鉄平の身になにが起こっていたのかや、鉄平が消えてから50年以上の月日を経て、その真実を現代の朝子が知ったという展開は、悲しくも美しいストーリーだったと思う。 ただ、現代編の主人公だった玲央の意味と彼の物語について、どうにもモヤモヤしてしまうのである。 玲央は、鉄平と顔がそっくりだということが、現代の朝子と仲を深めるきっかけだった。しかし、最終話で、入手した過去の実写映像を見て、本物の鉄平は玲央と似ていないことが明らかに。要するに、朝子にとって遠い過去の記憶だったため、玲央と鉄平が似ていると勘違いしただけだったのだ。 神木隆之介が一人二役で演じていたため、当然、鉄平の孫が玲央なのではないかといった考察が白熱していたが、2人にはなんの血縁関係もなく、完全にただの他人だったことになる。 ただ、先に言っておくと、筆者がモヤモヤしているのは、主人公2人がなんの関係もなかったという点や、そっくりさんというのは勘違いだったという点ではない。 ■なぜ玲央というキャラが現代編の主人公なのか 現代編の玲央の存在意義や彼の物語に、あまり意味がなく非常に薄味だったことが、めちゃくちゃモヤッとするのである。 あえて乱暴な言い方で要約すると、現代編は金持ち老婦人(朝子)がたまたま街で見かけた好みの顔のホスト(玲央)を囲っただけ。百歩譲って鉄平と玲央が本当に瓜二つだったのであれば、その出会いに運命めいたものも感じるが、それも朝子の勘違い。 人生に行き詰まり、やさぐれていた玲央が、朝子との出会いで救われ、鉄平の人生を知り、自分の人生も前向きに歩んでいけるようになった――ということは、もちろんわかる。 でも、「なぜフィーチャーされたのが玲央だったのか?」の意味合いが薄すぎる。 息苦しい現代で人生に迷っている若者なんてごまんといるのに、そのなかでなぜ玲央がこの物語の主人公に選ばれたのかと考えたとき、その理由(きっかけ)が「金持ち老婦人の好みの顔だったから」というだけなのだ。 別に「玲央は鉄平の孫でした」なんていう、安直な真相を求めていたわけではないのだが、玲央が現代編の主人公を担った意味づけは、もっとしっかり作ってほしかったというのが率直な感想。個人的には「金持ち老婦人の好みの顔だったから」よりは、「玲央は鉄平の孫でした」のほうが、安易だがまだマシだった。 ■視聴者をなんとか引きつけたい制作陣のご都合主義? 正直言って、初回からずっと現代編がなにを描きたいのかわかりづらかった。けれど、最終話でその疑問が解ける真相・展開が用意されていて、「玲央が主人公だったことにそんな意味があったのか!」と、すっきりさせてくれると信じていた。 ……その期待は、悪い意味で裏切られたわけだ。 最終話を観終えて、現代編は朝子が過去のしがらみから解き放たれるまでを描いた物語だったというのはわかる。だが、わざわざ神木に一人二役をさせるという意味深長なキャスティングをしてまで、玲央というキャラクターを主人公に置いた意味が雑すぎた。 顔が瓜二つな過去と現代の主人公にどんなつながりがあるのかと引っ張りに引っ張っておいて、実は似ておらず、なんの関係もありませんでした、というオチ。それは神木が演じた現代編の主人公の存在自体が、視聴者をなんとか引きつけたいという制作陣のご都合主義に思えてならなかった。 ●堺屋大地 恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿
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