センバツ高校野球 作新学院 チームの軌跡/上 「団結力」、一球に集中 /栃木
◇主将のこだわり、成長の原動力 第96回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)に作新学院(宇都宮市)が2年連続で出場する。1年上の代と異なり、下級生の時にメンバー入りした経験のある選手は少なかったが、丁寧にチーム作りに取り組み、試合を重ねるごとに力を伸ばし、昨秋、関東王者に輝いた。主将の小森一誠(2年)は「日本一を目指し、気を引き締めて練習に取り組み続ける」と気合十分だ。【鴨田玲奈】 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 「現時点で力はない。ただ、地道にコツコツやれば、必ず結果は付いてくる。しっかりやり切れるチームになろう」。新チームが発足した昨年7月末、小針崇宏監督はこんな言葉で部員たちを鼓舞した。この学年で夏の県大会で背番号をもらっていたのは、小森や投手の小川哲平(同)ら3人のみで、公式戦の出場経験が無い選手がほとんど。「個々の能力が足りない」と自覚していた小森は「自分たちが勝つためには、チーム全員が団結して1勝をもぎ取りに行く姿勢が必要だ」と、新チームのスローガンを「団結力」に決めた。 小森が徹底したのは部員の「意思統一」。練習前には必ず全部員を集め、「しっかり団結力を持って臨んでいこう」と呼びかけ、士気を高めた。練習中に返事の声がばらけていればそろうまでやり直し、ランニングでは歩調とかけ声を合わせるようにした。 細かなこだわりは全て「全員が一球に集中するため」と小森。秋の公式戦の出場メンバー発表後に、メンバー入りがかなわず気持ちが沈んでしまう選手もおり、結束が失われそうになることもあった。マネジャーの寺門樹広(同)は、そんな仲間も取り残さないため、一人一人に「まだ終わりじゃないから、諦めるのは早い」と励ました。 選手間の意識の差を可能な限りなくし、同じ方向を向くよう努めたことで選手たちは秋にかけて大きく成長。当初は実力不足を指摘していた小針監督が「野球について真面目に勉強する姿勢があり、吸収力もある。練習試合では粘り強く接戦を展開していて、充実した日々だった」と評するまでになった。 そして迎えた秋季県大会、チームは2年連続の優勝を果たした。新チームの成長を象徴する大会だった一方で、全5試合を通じてのチーム打率は2割9分1厘。選手たちは得点力不足という新たな課題に直面した。