スポーツカーの原点「メルセデス・ベンツ SL」70年の輝かしい歴史
本来、SLは「Super Leicht(ドイツ語読みでスーパーライヒト=超軽量)」の略であるが、R107は先代のモデルのW113と比較してボディサイズの拡大や装備の充実が行われ、英語の「スーパーラグジュアリー」の意味を持つようになり、エレガントさと重厚感を醸し出すモデルシリーズとなった。
1970~1980年代は厳しい安全基準のため、いわゆる「オープンカー冬の時代」であった。その逆境の中ではあったが、R107は米国向けモデルの開発へ向けて果敢に挑戦した。他メーカーがオープンカーからタルガトップなどへの変更を余儀なくされる中、Aピラー部の大幅な強化とウンドウスクリーンをフレームへ接着するという革新技術の導入で安全基準をクリアーした。米国で新車登録できるオープンカーは、この時代にはメルセデス・ベンツのSL/R107しかなく、これによりメルセデス・ベンツSLはブランド力を向上させることに成功した。
4代目SL/R129(1989-2001年)
1989年3月のジュネーブモーターショーは、メルセデス・ベンツが18年振りにフルモデルチェンジしたR129モデルシリーズの次世代「SL」を発表する大きな舞台となった。R107から大幅な進化を遂げたR129は、好評を博して受注が年間生産台数の20,000台をすぐにオーバーして、ウエイティングリストに多くの名前が連なった。
発売からわずか1年で、国際的な「カーデザイン賞」を受賞した。R129のデザインを手がけたのはサッコプレートで有名になった巨匠ブルーノ・サッコと彼のチームである。スタイリングは先代から大きく様変わりし、ロングノーズのロードスターのイメージはキープしながらも、フラッシュサーフェス化、ボディと一体化したスラントグリル、流れるようなウェッジシェイプなど、非常にモダンな装いに着替えさせたのである。これらの処置は空力向上にも配慮されたもので、当時としては非常に優れたcd値=0.32を達成し燃料節約と速度向上を実現した。