NakamuraEmi、多幸感あふれたツアーファイナル「成長してまた帰ってきたい」:レポート
シンガーソングライターのNakamuraEmiが10月27日、Zepp Shinjuku (TOKYO)で『KICKS Release Tour 2024』のツアーファイナル公演を行った。ツアーは、前作『Momi』から約2年10カ月ぶりにリリースされたオリジナルアルバム『KICKS』を携えて、ギタリスト・プロデューサーのカワムラヒロシと2人で、6月8日、北海道・札幌cube gardenを皮切りに、8月25日、福岡 DRUM Be-1までAcoustic ver.として24公演を回り、10月11日、大阪 味園ユニバースから27日、Zepp Shinjuku (TOKYO)までBand verで3公演、合計27公演を行った。ツアーファイナルではゲストにさらさ、XinU、MASSAN×BASHIRY、Mummy-Dを迎え、豪華なステージを展開。最新アルバム『KICKS』の収録曲を中心に、代表曲「YAMABIKO」をオールキャストで届けるなどアンコール含め全18曲を披露した。そのライブの模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】 【写真】『KICKS Release Tour 2024』の模様 ■「42年間生きてきて一番豪華です 開演時刻になり、大きな拍手で迎えられるNakamuraEmi。オープニングを飾ったのは「BEST」。序盤からエネルギーに満ちた歌声とサウンドで会場を席巻。この曲が起爆剤となり、「Don't」、「大人の言うことを聞け」とグルーヴィなナンバーでさらに会場のテンションを上げていく。観客からの歓声と拍手が鳴り止まない。出だしの3曲で早くもクライマックスのような盛り上がりで、コンディションの良さが伝わってくるパフォーマンスだった。 「今日はファイナルです。いい時間にしますので最後までお付き合いいただけたら」と意気込みを話すNakamuraEmi。メンバー紹介を挟み、ニューアルバム『KICKS』から「晴るく」を披露。儚さと強さが同居しているかのような、NakamuraEmi唯一無二の歌声。観客も身体を揺らしながら伸びやかな歌声を堪能している様子が伝わってきた。 ここからはゲストを迎えてのステージを展開した。まずはXinUとMASSAN×BASHIRYを迎え「Hello Hello(feat.XinU)-NakamuraEmi&MASSAN×BASHIRY」を披露したNakamuraEmiはこのコラボについて、海面にいる魚と深海魚が混ざり合う「潮目」の瞬間だと形容した。実際、異なるカラーのエネルギーが重なり合いケミストリーが生まれていると感じた。コラボの醍醐味が詰まったナンバーで最高の空間を作り上げていく。 続いてはさらさを呼び込み、インディーズ時代から歌われている曲「雪模様」を届けた。自然界のチカラを感じさせてくれたという、さらさの歌声とキーボードの伊澤一葉のフレーズが「雪模様(feat. さらさ&伊澤一葉)」の新たな一面を見せてくれる。また、サビでのハーモニーが心地よく会場を包み込んでいく。間奏での幻想的な雰囲気もこのコラボならではだった。NakamuraEmiは、「42年間生きてきて一番豪華です」としみじみ。 時がゆっくり流れていくような感覚を与えてくれた「白昼夢」。カワムラヒロシのギターと伊澤一葉のピアノの音色が優しく包み込む中、NakamuraEmiはそこに溶け込んでいくような歌声を響かせる。そして、NakamuraEmiがフルートを披露した「Rebirth」。言葉ではなく音でも自身の感情を伝えいくその姿は、新たな感情表現を見せる。チルなサウンドとともに、観客の心を揺さぶりかけていく。 その後ニューアルバム『KICKS』収録の「究極の休日」、「梅田の夜」、「火をつけろ」の3曲を立て続けに披露。今のNakamuraEmiの勢いを存分に感じることができたセクションだ。アルバムタイトル『KICKS』に込めた思い、新しいところに蹴り出す、進んでいく様を強く感じさせ、観客もノリノリで楽しんでいる。そして、生々しいグルーヴとコール&レスポンスが一体感を生んだ「かかってこいよ」への流れも完璧だった。 ■今日は自分にとって人生で一番幸せな日 ライブは後半戦へ突入し、「祭( feat Mummy-D)」を披露。楽曲の中盤で三重県桑名市をきっかけにコラボしたMummy-D(RHYMESTER)がステージに登場! 大歓声のなか、会場の熱が高まっていくのが感じられる。客席はビートに合わせグッズの“バウンスうちわ”を使用し、ステージに向かって仰ぐ。まさに祭りのような盛り上がりを見せた。 曲を終え、あまりの興奮に「本物ですか?」と尋ねてしまうNakamuraEmi。RHYMESTERを聴いて人生が変わったと話す彼女。そんな憧れのMummy-Dとのステージでの共演は夢のような時間だったことだろう。「こんな日が来るなんて本当に思わなくて」と、今回コラボに至った経緯や裏話を話すなど、トークでも盛り上げた。 そして、ゲスト全員を呼び込み今夜限りのスペシャルバージョンの「YAMABIKO」を投下。絆を感じさせるステージに会場のボルテージは最高潮! XinUとさらさは類い稀なる歌声で「YAMABIKO」 を彩り、柏倉隆史(Dr)、まきやまはる菜(Ba)、伊澤一葉(pf)、カワムラヒロシ(Gt)とBASHIRY(Gt)によるソロがフックとなりテンションを高めていく。MASSANは観客とコール&レスポンスで一体感を生み出し、Mummy-Dは「YAMABIKO」のビートに合わせ、NakamuraEmiが当時よく聴いていたRHYMESTERの「ONCE AGAIN」のリリックを乗せるという粋なパフォーマンスも。オールゲストで届けた「YAMABIKO」は、確実にこの日のハイライトの一つとして刻まれた。 ライブもラストスパートへ。過去に通っていた算盤塾の先生と親友との思い出が綴られたら楽曲「一円なり」を歌唱。自前の算盤を弾くNakamuraEmi。小気味良く算盤を弾く音が楽曲を彩っていく。どこかNakamuraEmiの当時の思い出を追体験しているような感覚にさせてくれる歌詞も印象的だった。 MCでは、「何歳になっても、好きなことをやらせてもらっても、凹んだり悩んだりする毎日ですが、皆さんにとってもライブに行くというのはものすごく特別なことでもあると思うんです。みんなも忙しい毎日で、音楽やライブどころじゃないよなという日もあると思います。でも、何かの時にNakamuraEmiのライブ、久しぶりに観たいなと思ったときに、自分が元気で、なるべく皆さんの側に行ってライブができているような心と身体でいたいなと、このツアーを回って直接みんなの顔を観て思わせてもらいました。みんなの話し相手になるような曲や歌詞が少しでもあるように、私もいろいろな経験を積んで、成長してまた帰ってきたいと思います。今日は自分にとって人生で一番幸せな日でございます」と想いを語った。 ■客席で観客に囲まれながら「ファンレター」を歌唱 本編ラストはコロナ禍で生まれた曲「投げキッス」。世界がパンデミックの窮地に立たされるなか、人間の心は人間の心が救うというNakamuraEmiが感じた想いを綴ったナンバーだ。エレクトロ要素のあるサウンドにスケールの大きさを感じさせるメロディーが、グッと聴くものたちの心を鷲掴みにする。カワムラヒロシがエレキギターで奏でるギターソロも一つのアクセントとなり楽曲を彩る。そして、仄暗さを感じさせていたステージが、光溢れるステージに変化し、アウトロへと流れていく瞬間は鳥肌ものだった。 アンコールの手拍子に応え、再びステージに登場したNakamuraEmiとカワムラヒロシの2人。NakamuraEmiはアンコールを受け感極まり「泣きそう...」とポツリ。そして、ここで来年の9月6日に出身地である神奈川・厚木市文化会館でワンマンライブを行うことを発表した。 最後に披露したのは、自分の音楽に迷いが起きた時にファンレターを読んでいたら、そんな迷いもなくなったと語り、その手紙への返事を綴った曲「ファンレター」を2人のみで届ける。この曲は2021年リリースのアルバム『Momi』のボーナストラックとして、CDとアナログ盤にのみ収録されている。ステージ前方に設置されたお立ち台にNakamuraEmiとカワムラヒロシが立つと、マイクを通さず生声で歌い、アコースティックギターも生音で演奏。音響機器を何も挟まず直接メッセージや音を届けたい、そんな想いが伝わってきた。 歌い始めてまもなくしてステージを降り、NakamuraEmiは柵を越え客席の中へ。歌いながら客席を回っていくまさかの展開に観客も驚きを隠せていない様子。途中で「YAMABIKO」のフレーズを織り交ぜたり、観客とハイタッチをするなど、きっとそれぞれの記憶に深く刻み込まれたはずだ。あっという間の約2時間。ツアーを締めくくるスペシャルなステージは大団円を迎えた。 ツアーの度に成長を感じさせてくれるステージ。今回は多くのゲストアーティストを迎え、新たな世界観を見せることに成功した。アットホームなMCも手伝って、日に日に増していくNakamuraEmiとファンとの絆を感じさせてくれたライブでもあった。常に人の温もりを感じさせてくれるステージが、今後どのように進化していくのか、とても楽しみになったツアーファイナルだった。 ■セットリスト 『KICKS Release Tour 2024』 10月27日@Zepp Shinjuku (TOKYO) M1.BEST M2.Don’t M3.大人の言うことを聞け M4.晴るく M5.一目惚れ M6.Hello Hello( feat. XinU)-MASSAN×BASHIRY M7.雪模様( feat .さらさ) M8.白昼夢 M9.Rebirth M10.究極の休日 M11.梅田の夜 M12.火をつけろ M13.かかってこいよ M14.祭 (feat. Mummy-D) M15.YAMABIKO feat All Guest M16.一円なり M17.投げキッス En.ファンレター Vo.NakamuraEmi / Gt.カワムラヒロシ / Ba.まきやまはる菜 / Dr.柏倉隆史 / Pf.伊澤一葉