「見る力」は筋肉のように鍛える時代 “スポーツビジョントレーニング”の最先端を体験
生江さんから説明を受けたのちに、トレーニングメニューを体験してみました。本来はフルで行なうと20分ほどかかるそうですが、デモのため2種目に絞ってトライしました。 ひとつ目は、「眼と手の協応動作」のトレーニングです。視野をA、B、C、Dの領域に区切り、どのエリアで反応精度が高いのか(もしくは低いのか)を調べるものです。 動作は簡単。画面上に現われた点を出現した瞬間にタッチするというものです。その反応速度を測定していきます。
測定の結果、私は全体的に反応速度が遅めであり、とくにD領域の下部(視野右下)の反応が鈍いことがわかりました。
スポーツは見るだけでなく、その上で体が反応しないと意味がありません。こうして実戦に活きる能力をトレーニングで培っていくのです。
ふたつ目は空間認識力のトレーニングです。
時間いっぱい、正面から見た画面を移動するターゲット複数個が最後に止まった位置を、真上から見た画面に置き換えて回答し、その精度を測ります。
私は残念なことに、ほぼ正解を出すことができず計測は終了。プロサッカー選手などはやはり能力が高く、このテストを最高難度で行なってもほぼミスなく回答するそうです。 自分の現在地に残念な気持ちも生まれますが、あきらめるのは早いと思い直します。冒頭でも触れたように、これらの能力は継続してトレーニングすることで向上するからです。 「海外では、スポーツビジョントレーニングが当たり前のように行なわれている国もあります。スポーツ施設の中に、いろいろな項目でトレーニングできる仕組みがあって、体を鍛えるのと同じように、眼も鍛えているんです。日本は残念ながらその点では遅れているので、これから発展させていきたいと思います」(生江さん) 眼から鱗であったと同時に、もっと早く知りたかったという気持ちが湧き上がりました。現役でフィールドスポーツに取り組んでいるみなさん、ぜひ肉体だけでなく、スポーツビジョン能力もトレーニングしてみてはいかがでしょうか。
取材・文・写真/森本雄大 画像提供/株式会社東京メガネ