娘の体調を気遣う母が贈ってくれたのは「炊飯器」だった…女優・南沢奈央とプレゼントの思い出
〈プレゼントで 気持ちや想い出や目に見えないものも つながっていく だからもう会えないかもしれない そんな誰かとも つながることができる〉 そうだ、祖父が作った木彫りの置物。祖母が着ていた洋服。デビュー作で共演した俳優の林隆三さんからいただいた下駄。私小説家の西村賢太さんのサイン色紙。くれた人はもういないけれど、確かにそれはここにある。向き合ってみると、一気にその人との時間が思い出されていく。 矢部さんの話を読んでいるはずなのに、いつの間にか自分自身の、人との記憶がやさしく蘇る。そしてわたしもたくさんの思いを受け取っていたんだ、と気づいた。 カバンの中を見てもそうだ。財布とスマホ以外、誰かからもらったものだ。 ワイヤレスイヤホンとペンケースはもちろん、手ぬぐい、キーケース、ティッシュケース、パスケース、巾着袋、この中に入っているリップクリーム2本も。そして、この『プレゼントでできている』もそうだ。 ほんとに、プレゼントでできている。
新潮社