収穫したコメの安全性を確認 基準値の7倍の水質汚染で操業停止の産廃処分場 県の対応に消えない不安【広島発】
広島県三原市の産廃処分場の周辺の水質汚染が深刻化し、県は業者に対し4回目の行政指導で操業を一時停止させた。周辺で収穫されたコメは検査で「安全」とされたものの、農家や住民の不安は消えていない。稲作を諦めた農家もあり、度重なる操業停止と再開に住民は振り回される形になっている。 【画像】産廃処分場操業停止 コメは安全
ひとまずは「安全」
三原市本郷町の産廃処分場周辺の農地で収穫されたコメは、農協が行った検査で「安全」と確認された。 今回の検査では、コメに含まれる重金属類が食品衛生法の基準値を下回っていた。しかし、農家の心配の種が消えたわけではない。 コメ農家の抦崎雅司さん(※崎は「たつさき」)は「検査をしなければ噂が事実と違う方向に流れることを恐れた」と語り、「今年は大丈夫でも、来年や再来年はどうなるのか」と将来への不安を募らせる。
4回目の行政指導
本郷最終処分場は、有害物質を含まない廃棄物のみを埋め立てる施設のはずだった。 しかし、7月に県が行った浸透水検査で基準値を超える鉛が検出され、「勧告」による行政指導で、廃棄物の搬入と埋め立てが一時中止された。その後、改善が見られたとして県は9月に操業再開を認めた。 ところが10月末の再検査で基準値の7倍を超える水質汚染が確認され、今度は「勧告」より厳しい「警告」による指導が下り、11日から再び操業を停止。県の行政指導はこれで4回目となった。 現地を取材した五十川裕明記者によると、操業停止後も川底にはオレンジ色のヘドロが堆積し、鼻をつんと突くような悪臭が漂う。
業者と県の対応に募る不信感
地元住民は「科学的検証に基づいた原因究明」を求めて県に陳情書を提出した。 住民グループ「三原・竹原市民による産廃問題を考える会」の三島弘敬さんは「業者に適格性が欠けている。行政指導が4回にもなれば停止命令や認可取り消し処分が当然」と県の対応を厳しく批判する。 県は4回目の行政指導で再度操業中止を警告した後に「極めて重大かつ深刻に受け止めている。地元住民の不安解消のためにできることに取り組みたい」とコメントしている。 農協でコメの検査を受けた農家の抦崎さんも「操業をやめてほしい。こんなところに処分場を造るのはおかしい」として、農作物への影響が長期化する可能性を懸念している。 処分場を巡っては、県の行政指導とは別に、住民が県に設置認可取り消しを求めた裁判で、1審の広島地裁は2023年、住民の訴えを認め、認可取消を県に命じる判決を言い渡した。しかし、県が控訴し、広島高裁で2審が続いている。住民らは、行政指導と裁判に対する県のちぐはぐな対応に振り回される形になっている。 (テレビ新広島)
テレビ新広島