球宴でわずか「5」と奪三振ショーが減った理由は直球勝負美学の弊害なのか
過去オールスターの最少三振試合は「3」で2試合ある。1試合は、2008年8月1日に横浜スタジアムで行われた第2戦。全パは、岩隈(楽天)、杉内(ソフトバンク)、成瀬(ロッテ)、マー君こと田中(楽天)、武田久(日ハム)、小松(オリックス)の錚々たるメンバーの継投で挑んだが、奪三振はゼロだった。 ちなみに、このときの全セのラインナップは、1番から青木(ヤクルト)、井端(中日)、Tウッズ(中日),ラミレス(巨人)、和田(中日)、村田(横浜)、内川(横浜)、阿部(巨人)、荒木(中日)というもので、阿部が8番に入るという凄い打線だった。こういう試合は、伝染するのか、全セも3三振しか奪えず、この1試合3三振が最少奪三振記録試合となった。もう1試合は、2013年7月22日に、いわきで行われた第3戦。東北復興を願い3試合制が復活した年に同じく1試合3三振で終わっているが、いずれも2000年代に入ってからの出来事である。 また個人の最多奪三振記録も、ここ数年では、2013年の第2戦で千賀(ソフトバック)が記録した「5」に留まっている。 掛布氏は、奪三振ショーが減った傾向の裏に「投球スタイルの変化、道具を含めた打撃技術の向上が生んだプロ野球新時代の流れがある」という見方をしている。 「ボールを動かす投手が増え、バットの上ではなく、バットの下で芯を外すというピッチングスタイルが主流になった。三振よりも勝利、ゲームを作ることへの意識が強くなった。加えて高校時代から金属バットで直球のスピードボールへ対応する基礎ができ、バットの軽量化によりバットコントロール力が高まり、ウエイトトレーニングが進み打者にパワーがつくなど、打撃技術が向上したことにより、三振を奪うことが難しくなっている。そういう時代の流れに加えて、交流戦というものの中で、すでにセ、パの真剣勝負が実現しているので、オールスターでは、120パーセントの力を出す本当の勝負というものができなくなっているような気がする。個人的には直球勝負、力対力勝負の美学は、絶対に捨てるべきではないと考えるが、投手は打たれることを怖がり、その美学にふさわしい勝負が減っていることも確か。勝利至上主義の中、個対個の魅力が、消えていくのは、必然の流れかもしれないが、本当のプロフェッショナルとは何かをもう一度、見直す時期に来ているのかもしれない」 データ解析や、科学的トレーニングが広がり野球の進化は進んでいるが、その一方で失われているものがあるようにも感じる。直球勝負の美学もいいが、何が何でも奪三振という美学があってもいい。