約500億円の超高額不動産! セイコー創業者の元邸宅を売却…敷地は何に使われるのか
地下鉄の駅から歩くこと7~8分、東京でも指折りの高級住宅地として知られる港区白金の急な坂を登ると、塀で囲まれた屋敷が見えてくる。うっそうとした樹木の向こうには、古びた洋館が。ここは服部時計店(現セイコーグループ)の創業者・服部金太郎の元邸宅「服部ハウス(通称)」だ。敷地は約5千坪もある。 【写真を見る】本当に家? 約500億円の超高級物件
ライオンズマンションで知られるデベロッパーの大京が、この物件を約500億円で買い取ったと「日経不動産マーケット情報」が報じたのは昨年12月21日。 不動産会社の幹部が言う。 「元所有者のセイコーHDがシンガポールの不動産会社『シティ・デベロップメンツ』に、この物件を売却したのは2014年のことです。価格は305億円でした。数棟のコンドミニアムが建つとみられていましたが、動きがないまま10年が経過、昨年7月に再売却となったのです」
極東国際軍事裁判の検事らの住まいにも
現在、服部ハウスの敷地に立っているのは洋館と2軒の和風邸宅。なかでも洋館は有名建築家の高橋貞太郎の手によるもので、彼が設計した「前田侯爵邸」は重要文化財になっている。 それだけではない。服部ハウスは戦後GHQに接収され、極東国際軍事裁判のジョセフ・キーナン検事らの住まいになったことが知られている。山崎豊子の『二つの祖国』によると、裁判の判決文はここで日本語に翻訳されたという。日本の近代史においても重要な場所なのだ。 「当初、シティ・デベロップメンツは洋館を保存する方針を示していましたが、そうなると敷地の半分近くが犠牲になる。容積率が300%しかない場所なので、手放したのは、採算性の事情もあったとみられています」(同)
「マンションになる場合、価格は…」
そんなわけで、今回、服部ハウスの主となった大京だが、ここにライオンズマンションでも建てるつもりなのだろうか。 同社の親会社のオリックスに聞くと、 「何を建てるのかも、また、中の建物をどうするのかも決まっておりません」(広報担当者) 不動産コンサルタントの森島義博氏が言う。 「敷地の半分が使えないという前提でマンションを建てるとしたら、約70平方メートルの部屋で正味の建築コストが2億円弱ぐらい。これに販売管理費や利益などを乗せると価格は約2億7千万円からでしょうか」 ただし、洋館部分の固定資産税なども住民の負担になる可能性があるという。この場所に“住まう”者は、歴史と税の重みをしかと受け止めることになる。 「週刊新潮」2024年2月8日号 掲載
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