【解説】変わる高松市中心部の駐車場 激戦区の事情は
KSB瀬戸内海放送
高松市中心部の「駐車場」についてお伝えします。 高松市は10月、利用が低迷する大型の市営駐車場を廃止する方針を示しました。一方で増加を続けているのが民間のコインパーキング。「駐車場激戦区」で、行政と民間それぞれの事情を探りました。 南部駐車場の利用率を見る>>>>>>
■高松市が市営駐車場を再編へ 10月に開かれた駐車場の課題などについて話し合う協議会で、高松市は市営駐車場の再編案を示しました。 高松市観光通の「南部駐車場」を2026年度末で廃止。近くの「瓦町駅地下駐車場」に機能を集約し、リニューアルしようというものです。 田町商店街の近くにある「南部駐車場」は鉄骨コンクリートの5階建てで、収容台数は408台。築37年が経ち、施設は老朽化が目立ちます。 (松木梨菜リポート) 「駐車場の5階です。天井の塗料のようなものが辺りに散らばっています」 廃止の理由の一つが、エレベーターの更新に1億円かかるなど、今後6年間で3億円の修繕費が見込まれること。 もう一つが利用率の低さです。南部駐車場の利用率は市の中心部に8カ所ある市営駐車場で最も低く、ここ10年以上、10%に満たない状況です。 市によると、施設の整備費の借入金もあり、2022年度までは億単位の赤字経営が続いたということです。 利用率ワースト2位の「瓦町駅地下駐車場」もこの5年間は10%を下回っています。 ことでん瓦町駅の地下という交通結節拠点としての役割もあるため、利用者のニーズに対応した「より使いやすい駐車場」にする方針です。 (松木梨菜リポート) 「近年はSUV車に乗る人も増えています。そのため駐車スペースからはみ出して止められている車も多く、区画自体の拡大も検討しています」 また、現在午前7時半~午後10時までの営業時間を見直し、24時間化も検討しています。 (利用者は―) 「いかに市が負担できるかどうかって話でしょうけどね」 「いろんな意味で止めやすくなると、ここに止めてから皆さん街に出歩くんじゃないかなという気がします」 ■増加を続ける民間のコインパーキング 利用の低迷は周辺の環境も影響しています。 (高松市 交通政策課/吉峰秀樹 課長) 「民間駐車場がかなり多く整備されてきておりまして」 高松市交通政策課が2023年に行った調査によると、瓦町駅周辺には民間のコインパーキングなどが点在し、需要を供給が上回っています。 料金を比べてみると南部・瓦町駅地下駐車場は25分ごとに100円ですが、近隣のコインパーキングは60分100円など安い価格設定です。 中には20分50円というところもありました。そして営業時間はどこも24時間です。 (高松市 交通政策課/吉峰秀樹 課長) 「民間の役割との差別化といいますか、役割分担が必要だと考えていますので。公共がどこまで駐車場サービスを提供していくべきなのか、検討していかなければならないと考えています」 一方、規模を拡大している民間事業者は…… (あなぶきハウジングサービス パーキング事業部 四国営業所/金光宏樹 所長) 「このあたりであれば、ビジネスで朝車通勤されて止められて、帰りに出庫される方が非常に多いです。やはり街中の中心地に造っている」 あなぶきグループが運営するあなぶきパークは、この10年で高松市中心部に100カ所、1200台分を整備。利用率が9割以上の駐車場も多くあるそうです。 ほかにも台数を増やしている民間事業者が多く、市中心部は10社が競合する激戦区になっています。 (あなぶきハウジングサービス パーキング事業部 四国営業所/金光宏樹 所長) 「県外からも高松に新規参入された会社さまもいらっしゃいますので、軒並み増え続けているのはそこが要因かなと思います」 ■「空いた土地の活用」で駐車場が増加 高松市中心部にコインパーキングが増えている理由について、あなぶきパークの運営会社は「空いた土地の活用」として選ばれていることを挙げています。 親から土地を相続した県外に住んでいる人が駐車場にして維持管理しようというケースが増えているんです。 住居を建てたり商業活用したりするのに比べ、コインパーキングは初期投資が抑えられ、土地の所有者にとってリスクが「低い」と言われています。 ■県立アリーナのオープンで駐車場の需要増 こうした中で高松市では今、駐車場の需要がさらに増えると見込まれています。きっかけは香川県立アリーナのオープンです。 (松木梨菜リポート) 「県立アリーナの向かい側、目の前にもコインパーキングがあります。実はこちら3年前に整備したものだといいます」 高松市浜ノ町エリアのこちらの駐車場は、近くに多くあるマンションの来客者などのニーズに応え、3年前に整備されました。 その後、県立アリーナの整備計画が発表され、周辺に新たに3カ所を整備しました。 県立アリーナでは「こけら落とし」としてサザンオールスターズのコンサートが決まるなど、にぎわいが期待されています。 (あなぶきハウジングサービス パーキング事業部 四国営業所/金光宏樹 所長) 「人がこちらに来るというのを想定した上で、駐車場が足りていないのが現状にありますので、どんどん浜ノ町エリアは造っていきたいと考えています」 香川県と高松市も駐車場の需要が増えることも見越し、県営と市営の駐車場の空き状況が分かるアプリを開発。 県立アリーナがオープンする2025年2月に運用を始めたいとしています。 (高松市 交通政策課/吉峰秀樹 課長) 「(アプリは)基本的には県営・市営の駐車場なんですけれども、それに限らず主要な民間駐車場も入っていただけるように今後調整を進めていきたいと思います」 ■専門家「歩ける街を目指す必要がある」 駐車場の競争はさらに激しさを増しそうですが、街づくりが専門の香川大学の西成教授は、少子高齢化社会を迎える中で「歩ける街」をめざす必要があると考えています。 (香川大学 経済学部/西成典久 教授) 「街中が歩いて楽めるような街をつくっていくのが大きな目標として、高齢ドライバー事故増加等もあるので、過度に車社会に依存していた状況を是正していく必要があると思います」 西成教授は2018年に高松市がことでん仏生山駅前に整備した「パークアンドライド駐車場」を例にあげ、郊外に駐車場を作り、公共交通で市街地に入るような仕組みを整備すれば、町を歩く人が増え活性化につながると考えています。 ただし、これを実現するためには公共交通を改革する必要もあると指摘します。 (香川大学 経済学部/西成典久 教授) 「民営だったところをある程度公営にしたり、市民は100円で全て乗れるとか、率先して行政がマネジメントする必要があると思うんですけど、方向性としてそっちにもっていかないと持続可能な地方都市はできません」 サンポート高松では香川県が「遊歩道化」を進め、県立アリーナのイベントには公共交通での来場を呼び掛けています。 一方で、民間が需要を見込んで駐車場を増やせば車で来たくなる人も増え、近隣住民からは渋滞や事故を懸念する声も上がっています。 街が大きく変わる今、駐車場や公共交通網を含めた街のあり方を考えていく必要があると感じます。
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