「恥を知れ!」”元男と決めつけられた”イマネ・ケリフへの悪質デマに大激怒したIOC関係者の意見
「デマを流して、間違いを指摘されたら今度は何もなかったかのようにそれを無視するってどういう神経なの? いわれのない誹謗中傷で、これまで何人が命を絶っているのかを思い出してから発信するべきだよ。せめて、背景を理解してから議論に参加しないと、一人の命を奪うことに加担してしまうかもしれないんだから。デマに踊らされている人は恥を知るべきだ」 【画像多数】「号泣のウラで…」柔道・阿部詩 ″合い鍵″半同棲のお相手は8歳年上「カリスマ美容師」 パリオリンピックでボクシング競技に携わるIOC関係者は、怒りを滲ませながら本誌記者にこう話した。発端は、女子ボクシング66kg級でのできごとだった。 「アルジェリア代表のイマネ・ケリフ(25)とイタリア代表のアンジェラ・カリーニ(25)の試合の第1ラウンドで、突如カリーニが棄権。カリーニは試合後、『自分の命を守らなければならなかった』とコメントしました。勝利したケリフは生まれてからずっと女性として活動してきたアスリートですが、男性ホルモンの分泌量が多い『ハイパーアンドロゲン』という特異体質の持ち主。そこに目をつけた人々が、口々にケリフを“トランスジェンダー”や“元男”などと決めつけ、『不公平だ』と非難したのです」(五輪でボクシングを取材する全国紙運動部記者) 『ハリー・ポッター』の作者として知られるJ.K.ローリング氏はこの試合を引き合いに、ケリフを『頭を殴りつけた女性(カリーニ)の苦しみを楽しんでいる男性(ケリフ)』だと非難した。 これに呼応するかのように、この問題はSNSを中心に日本にも波及。ひろゆき氏はケリフについて、『元男性』『金玉取った男性です。女性ではないです』とコメントした。 「ケリフは’21年の東京五輪にも出場していて、メダルを獲得することなく敗退している。反対に、カリーニは東京五輪で今回と同様に途中棄権しているんだ。ケリフを中傷している人々はあたかも『元男性が女性アスリートを蹂躙した』かのように語っているけど、事実はそうじゃない。彼女は生まれてからずっと女性として生きてきたし、女性アスリートとして世界の舞台で活躍してきた。性転換した後に水泳やウエイトリフティングの大会に出たアスリートとは違う。そもそも、この試合を実際に観た人は何人いるんだ?」(前出・IOC関係者) とはいえ、今回の問題の焦点をトランスジェンダーの文脈でなく、IOCの出場基準に見出す意見も少なくない。 「IOCはケリフについて、『年齢、性別がパスポートに準拠した上で、テストステロン値が競技上の優位性をもたらすレベルに達していない』と判断し、出場を許可しています。一方で、国際ボクシング協会はケリフについて『検査の結果、試合への出場資格を得るのに必要な基準を満たしていない』との結論を昨年3月に出している。このズレが、今回の悲劇を生んでいるように思えてなりません。国際的に統一されたテストステロン値の基準があればいいのです。ケリフ選手には申し訳ないが、テストステロン値が高ければ筋量が多くなりやすいというのが紛れもない事実。彼女が元男であるという悪質なデマの流布は断固として許されませんが、ハイパーアンドロゲンの女性アスリートを、今後のオリンピックでどうカテゴライズするかについては議論の余地がありそうです」(前出・記者) 今回の騒動で、ケリフに寄せられた筆舌に尽くしがたい中傷コメントは、間違いなく本人にも届いている。 「僕も正直、ケリフと他の女子選手が戦うことが公平かどうかはわからない。でも、IOCに許可されて出場した大会で、他のアスリートと同じように金メダルを目指す彼女の意志が、悪質なデマによって邪魔されることはあってはならないし、今回の件がトランスフォビアの人々の政争の具にされることも、あってはならないんだ。これはあくまで、出場基準を見直すキッカケに過ぎないんだから。腹が立ったのは、当初はケリフについて『あいつは性転換した男だ』と話していたヤツらが、それがデマだと分かった瞬間に謝りもせず『テストステロン値の問題について考えるべき』とか言い出したこと。アスリートを中傷する前に、ネットリテラシーのお勉強をする必要があるね」(前出・IOC関係者) アスリートに罪はないということを、見守る側は今一度理解する必要があるのかもしれない。
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