【有馬記念】ドウデュース、ずっと見守ってきた友道康夫調教師「ハーツクライっぽくないなというのが正直な印象でした」
◇「第69回有馬記念」(G1・22日・中山・芝2500メートル) 有馬記念で引退するドウデュースをそばでずっと見守ってきた一人が管理する友道康夫調教師(61)=栗東=だ。馬が1歳春の時に出会ってからの話を聞いた。 有馬記念のファン投票で史上最多47万8415票を集めたドウデュース。「人気は今までの管理馬で断トツですね。武豊騎手との相乗効果もあるのでしょう」。 管理する友道師も驚く人気ぶりだ。ただ、今でこそJRA・G122勝の名トレーナーも誇る名馬に成長を遂げたが、デビュー前から活躍を確信していたわけではなかった。 初めて見たのは、ドウデュースが1歳春の頃。「コロンとした感じ。ダートっぽい感じもあって、ハーツクライっぽくないなというのが正直な印象でした」。母ダストアンドダイヤモンズは米国のダート重賞馬で、姉も兄もダートで勝ち上がった。芝の王道路線のトップオブトップになることは想像しづらかった。 「遅生まれ(5月7日生まれ)でしたし、2歳の夏から走るような感じはなかったです」。入厩時にも初めて見た印象と大きく変わらず、先々の活躍に期待していた。ただ、徐々にその考えは変わり始めた。調教の強度を上げてもカイバをぺろりと平らげ、併せ馬でも遅れない。これは大物かもしれない―。新馬戦を快勝して臨んだアイビーSで、半信半疑だった考えは確信に変わった。 初輸送を考慮してふっくらと仕上げたが、輸送減りどころかプラス12キロの馬体増。そんな中でも直線で楽に抜け出すと2着グランシエロに首差をつけて勝利。「太め残りであの勝ち方。これは走るなと思いましたね」。着差はわずかでも、明るい将来を見通すには十分な勝ちっぷりだった。
予感通り、その後の活躍は言わずもがな。平地ではゴールドシップ以来となる4年連続のG1勝利を挙げ、現役最強馬と呼ばれる存在まで上り詰めた。「遅生まれで未完成だった2歳から完璧な成績。そこからさらに成長しているんですから。本当にびっくりですよ」。数々の名馬を育て上げた師も驚嘆する成長力を見せ、ラストランを前に「今が一番いいんじゃないかな。これがハーツクライの成長力なんでしょう」と最後まで驚かせ続けている。 フランスやドバイで輝きを失いかけ、武豊の負傷も重なった4歳秋には、ピークアウトもささやかれた。それでも何度でも復活を遂げ、その度に輝きを増す姿は多くの人々を魅了した。もちろん師もその1人だ。「ジャパンCの時は考えなかったけど、これが最後になると思うと考えるところはありますね。来年はないのかと思うと寂しくなりますよ」。ドウデュースを最も近くで見続けた男は、磨き上げたダイヤモンドが最高の輝きを放つことを願っている。
中日スポーツ