セブンが苦戦でも大ヒット「さばの塩焼」がすごい、総菜売り場を支える中堅メーカーの秘密とは?
しかし、STIの主要商品の冷凍回数は1回のみ。アメリカやチリの子会社が買い付け、頭や骨を除いた後、日本へ輸送するときだけ冷凍する。 国内の各工場でも食材のカットから味付け、火入れまで、残りの調理の全工程が行われる。製造を自社で完結できるため、余計な冷凍、解凍の工程がなく、品質を維持できるのだ。 セブン商品本部のデリカテッセン(総菜)部でセブンプレミアムの開発を担当する野口裕介氏は「原材料の調達から加工、調理まですべて自前でできる会社はSTIくらいしかいない」と話す。
■大手コンビニでも、さばの塩焼に「違い」 実は、冷凍回数が少ない点は、消費者にもわかるようになっている。 類似品を手に取ると、パッケージに「保存方法の変更者」や「保存温度帯変更者」と記載されたシールが貼られている。これはメーカーが製造後に一度商品を冷凍し、その後、卸売業者などが冷蔵温度帯に温度変更、解凍したことを知らせる表示だ。 STIの商品は製造後に冷凍していないため、このシールが貼られていない。大手コンビニのさばの塩焼の中でも、シールがないのはセブンだけだ。
セブンの野口氏は「メーカーにとっては大量生産し、冷凍してストックしたほうが手間が省ける。しかし、STIは味を優先して、手間をかけてでも発注が来た分を毎日製造し、冷凍せずに供給してくれている」と語る。 こうした都度生産も、調理の全工程を1工場で完結しているからこそできる業といえる。 STIのユニークな点はほかにもある。ポイントは規模と技術だ。全国のセブンには1日約2000万人の客が来店する。メーカーには巨大な需要に応える生産体制が求められ、中小零細企業では難しい。まして単独での供給となれば、なおさら規模が必要になる。
では大手水産企業やメーカーに委託すればよいかというと、そう簡単ではない。魚は大きさや脂のりなど個体差が大きく、焼き魚や煮魚のように形や見た目も重要な商品の場合、目視による確認や手作業での微調整が不可欠だ。完全な機械化が難しく、効率が要求される大手では扱いづらい。 焼き魚の場合、皮目の焼き具合にもムラが出る。そこで、STIではラインの端で作業員が目視で確認し、ガスバーナーで焼き目をつけ直している。