幼稚園で多数の園児が性被害 教育部、台北市の対応不備を指摘/台湾
(台北中央社)台北市の私立幼稚園で複数の園児が性被害を受けた事件を巡り、市の対応の不備を指摘する声が上がっている。教育部(教育省)の張廖万堅(ちょうりょうばんけん)政務次長は18日、台北市政府の手続きと調査には「やるべきことをやっていない部分が多くあった」との見解を示した。 事件は2022年7月、同園に通う女児の保護者からの通報を受けて発覚。保護者は女児の話から、女児が同園の男性職員から下半身を触られた疑いがあると気付いたという。だが当時、捜査当局が監視カメラの映像を調べたところ、明確な異状は確認できず、職員は不起訴処分になっていた。23年3月に2件目の通報が寄せられたのを受け改めて捜査したところ、この男性職員が2021年から23年にかけて女児6人に対して、教室や送迎エリアで女児の下半身を指で押したり触ったりするなどのわいせつ行為を働いていたことが分かった。この職員は同園経営者の息子だった。 台北地方検察署(地検)は昨年、男を加重強制性交罪と加重強制わいせつ罪で起訴。台北地方法院(地裁)で来月16日に判決が言い渡される。男は取り調べ以降、勾留されている。 この他、6人の女児に対する事件の審理期間中には少なくとも20人の女児の保護者が被害を訴えた。また、検察は男が女児に性加害を加える様子を撮影したとみられる大量の動画ファイルを新たに発見した。この部分については調べを進めているという。市教育局は昨年10月までに同園の設置許可を廃止し、男に過料60万台湾元(約288万円)を科した他、学校や学習塾などで教職に就くことを終身禁止した。 今月上旬、一部週刊誌が事件を報じたのを機に社会からの関心が高まった。台北市議は市が1件目の通報があった際に対応を怠り、男が当局による調査を受けている間にも引き続き園で勤務していたために被害が拡大したと指摘。園の一部の保護者は18日、声明を出し、市教育局の消極的な調査によって多くの園児が相次いで被害に遭ったと市の対応を批判した。 1件目の通報後に職員の男が勤務を続けていたことについて、張廖氏は18日、21年に各県市に通知した規定でも、男に休暇や休職を命じることは可能だったと説明。事件を巡り、地方政府が責任を果たしたかどうかが非常に重要な点になるとの立場を示した。 蒋万安(しょうばんあん)台北市長は19日、事件について謝罪。台北のいかなる子供が傷付くのも「全て私の責任であり、(責任を)引き受ける必要がある」とし、再発防止のため、法令や政策を見直し、改善していくと述べた。 (劉建邦/編集:名切千絵)