群馬県「人口10万人都市」の超濃厚な鉄道密度 東武桐生線、JR両毛線、上毛線、わ鉄が乗り入れる桐生市
六十五年史には「未成区間の笠懸村・岩宿停車場間は、既成区間が足尾鉄道線と相老停車場において接続できることになり、 したがって同線を介して官線との連絡が可能となったため不要」になったとある。 ■乗換駅は相老駅と赤城駅 桐生線を名乗りながら、なぜ中心市街地から離れているのか。桐生線は太田駅を出ると、途中までは岩宿駅に向かうように進むが、その後S字カーブを描いて新桐生駅を経由し、相老駅に至る。このルートの背景には、前述の計画が関与していたのかもしれない。
このようにターミナルが分散している桐生市内の鉄道だが、一方でJR両毛線以外はほかの駅で乗り換えが可能となっている。 わたらせ渓谷線と東武桐生線は相老駅、上毛線と東武桐生線は隣のみどり市の赤城駅を共有しているし、わたらせ渓谷線の運動公園駅と上毛線の桐生球場前駅は、野球場を含めた桐生市運動公園の両脇にあり、300mほどしか離れていない。 運動公園のすぐ南では、上毛線がわたらせ渓谷線をオーバーパスする形で立体交差している。運動公園駅からは上毛線の陸橋を見ることができ、その上毛線が地上に降りたところに桐生球場前駅がある。
さらに桐生球場前駅の付近では、相老駅でわたらせ渓谷線と分かれた東武桐生線が、上毛線の線路に近づいてくることもわかる。ただしホームがあるのは上毛線だけだ。 ここから赤城駅までの約2kmは、上毛線と東武桐生線の線路が完全に並行している。知らない人は単一路線の複線区間だと思うかもしれないが、進行方向の右側に列車が走ることもあるので、単線並列だとわかる。 東武桐生線のうち相老―赤城間は、他の区間よりかなり遅れて、1932年に開業した。すでにわたらせ渓谷線および上毛線は運行していたので、既存の鉄道用敷地をうまく活用して開業したことがうかがえる。
■東武線から上毛線へ直通もあった 現在、東武鉄道は上毛電気鉄道の主要株主になっているが、両社の関係は昔から良好だったようで、東武桐生線が赤城駅に乗り入れた直後から1960年代にかけては、上毛線の中央前橋駅まで乗り入れる列車が存在していた。 ちなみに当初の駅名は新大間々駅で、1950年代に、前述の東武鉄道の赤城山観光開発の一環で、赤城駅に改められた。現在も駅舎には、駅名の上にひらがなで「おおまま」と書かれている。