半導体、LNG、牛肉、人材…を売ってもらえない! 日本企業の没落と不都合な現実
かつては水産物の争奪戦で中国に敗れ問題になった「買い負け」。しかしいまや、半導体、LNG(液化天然ガス)、牛肉、人材といったあらゆる分野で日本の買い負けが顕著です。2023年7月26日発売の幻冬舎新書『買い負ける日本』は、調達のスペシャリスト、坂口孝則さんが目撃した絶望的なモノ不足の現場と買い負けに至る構造的原因を分析。本書より「はじめに」を抜粋してお届けします。第1回。
「買い負け」が象徴する日本企業没落に至る体質
悲鳴は、2021年の初頭から入ってきた。 絶望的なモノ不足について語ってくれたのは、私が仕事で関わりをもった機器装置メーカーの調達関連責任者だった。遅れて会議室に入ってきた氏は、社内中が大混乱していて、ついさきほどまで納期調整に奔走していたという。 「電子部品を注文しているが、納期が2年先とか3年先とか言われています。現在は在庫を切り崩して対応したり、該当の部材を使わない製品を生産したりしているものの、すぐに行き詰まるかもしれない」 当然だが、部材の一つでも手に入らないと完成しない。その他、何が足らないのだろうか。 「何が足らないかと言われると……。あえて言うなら、すべて」 先に上げた電子部品、材料、ハーネス、基板。そして労働者と、製品を運ぶ物流。それらすべてが不足する異常事態にあった。仕入先からの納期回答は日に日に後ろ倒しされていく。後ろ倒しされるくらいならまだマシで、大半が納入日未定になっていた。 「仕入先に連絡すると、まったく生産の目処がつかないと言われます。理由を聞くと、彼らも生産に必要な部材を調達できていない。2次、3次の仕入先から納入されない状況で、もはや追いかけられないんですよ。入ってくる予定だった部材も、どっかに取られたとか、運べなかったとかで。ウチの分は『あと回しにされている』と正直に言ってきた仕入先もいましたね。そこから、価格は通常の100倍だけど中国のどこかの商社が部材をもっているといった話が聞こえてきて、ためらっていると在庫がなくなっていて途方にくれました」 2019年末に発生した新型コロナウイルスは2020年に深刻な影響をもたらしていた。グローバルサプライチェーンは網の目のようにつながっている(サプライチェーン:供給連鎖。原材料・部品の購買から販売にいたる一連の流れ。上流から下流までの調達・加工・在庫・物流)。 どこかの国の機能不全は、世界中の企業に影響をもたらした。従業員が出社できない、生産できない、モノを運べない。供給面での問題があった。 そしてこのときは2021年。2020年初めに2万9000ドルほどを付けていたダウ・ジョーンズ工業株価平均は、コロナ禍で2万1000ドルほどに急落。消費低迷の懸念から企業業績を不安視する見方が広がった。 しかし、その後、株価は急回復を見せ、2021年初頭には3万1000ドルを突破、半ばには3万6000ドルまで伸びた。巣ごもり需要や、コロナ禍で各国が積極的な財政政策を講じたことにより、中ごろから、それまで落ち込んでいた消費を刺激したためだ。