「毎日お風呂で膝を抱えて反省。でも、自分は貫きたい」宇垣美里が日々考える“相手を傷つけずに自分も大切にする方法”
周囲の反応は気にしない―高校生の頃の自分を指標に
――自分の貫きたい姿に対して周りから批判を受けたとき、それでも自分を貫くのか、批判を受け入れるのか、何か基準にしているものはありますか? 宇垣美里: 正直あまり周囲の反応は気にしていませんが、高校生の頃の自分を指標にするようにはしています。高校生の頃の自分は、背負うものがなくて頑張れば何にでもなれると思っていて、ある意味で無敵でした(笑)。一番妥協のなかった時の自分から見て「よくもこんなダサいことしたな!」って怒られそうなことは直そうと思いますね。他人の反応は移り行くものなので、それよりも自分が自分を第三者的に見たときにどう感じるかを大切にしています。 ――高校生の頃、どんな大人になりたいと思っていましたか? 宇垣美里: 当時ずっと杉原千畝さんが好きで、「こんな人間になりたい!」と思っていました。自分が正しいと思うことのためなら、いろんなものを失ってでもその道を突き進む姿がすごくかっこよくて目標でした。入社試験で「尊敬する人は?」と聞かれたときにも杉原さんの名前を言っていて、友達からは「たしかに尊敬すべき人だけど、面接で言って大丈夫?」と心配されたりしていました。
自分の魂の領分を大切にすると生きやすくなる
――TBS退社後、フリーランスになってから心境に変化はありましたか? 宇垣美里: やっぱり自由になったかなと思います。もちろん会社が守ってくれていた部分はたくさんありましたが、当時の私は、アナウンサーというのは番組の中の1つの歯車に過ぎないと思っていました。なので、いっぱい出ようとかこうなりたいという気持ちも、あまり持っていなかった。けれど、フリーランスになってからは、良くも悪くも全て自分の責任。「TBSアナウンサー宇垣美里」ではなく「宇垣美里」になれることに自由を感じています。 ――最近では、インタビューする側にも人権感覚やジェンダーの観点などが問われるようになりました。宇垣さんは、アナウンサーとして社会の価値観とどのように向き合っていらっしゃいますか? 宇垣美里: そうですね。なるべく最先端の感覚を持って、人を守る発言や人を傷つけない発言をする人でありたいと思っています。ご結婚された方に対して「次はお子さんですね」と書かれた原稿があったときに、「私はこれは読みません。これはよくない」と言って直してもらいました。アナウンサーの仕事のいいところは、読まないという選択肢があるところだと思うんです。自分が自分を守るためにもすごく大切な行動の一つだと思います。 ――「自分を貫く」という感覚は、成長の過程で身につけていったものですか? 宇垣美里: 幼い頃から非常に我の強い、自分をしっかり持った子どもでしたね。私の周りには漫画などの物語があふれていて、成長の過程でどんな物語が好きか、どんなキャラクターにシンパシーを覚えるかを経験したことで、私の性格が確固たるものになっていったと思います。 でも、皆が私ほど自分の気持ちを表明する必要はないと思っています。私は、それが出来るからやっているだけで、出来るからこそやれない人の分までするよということに過ぎないと思っています。自分を貫くことができないと思っている方は、どうかそのことを気に病まないでほしいです。ただ、自分の心は売らないように、自分の中で「ここまでは絶対に大切にしなきゃいけない」というラインを決めて、そこまでは流されてもいいけど、それ以上は自分の魂の領分だと、そこを大切にすると生きやすくなると思います。 ----- 宇垣美里 兵庫県神戸市出身。同志社大学卒業後、2014年にアナウンサーとしてTBSテレビ入社。2019年に退社後はフリーアナウンサーとしてTBSラジオアフター6ジャンクションやテレビ、CMに出演する一方、俳優や執筆活動など多方面で活躍。漫画好きとしても知られている。近著に「今日もマンガを読んでいる」(文藝春秋)がある。 文:清永優花子 (この動画記事は、TBSラジオ「荻上チキ・Session」とYahoo! JAPANが共同で制作しました)