パリオリンピック女子バレー 初勝利のケニア戦の細部に見えた日本の現実と確かな希望
【パリまでの道のりを振り返る】 背筋を伸ばし、目を据えて答えた彼女は、無念さを払拭できていないようにも映った。それだけ大きな期待を受けていたからだろう。しかし、ケニア戦では遅まきながら才能の片鱗を見せた。 「3試合を終えて、相手もオリンピックにかける思い強かったです。そこで自分たちが押されて、力を出しきれませんでした。オリンピックにかける思いが、相手のほうが上回っていました。これから自分たちがどう改善するのか。自分自身、改善点がたくさんあるので、そこに目を向けてやっていきたいです」 24歳の石川はそう語り、この戦いを試金石にするはずだ。 ケニアはポーランド、ブラジルと比べてやや格下で、それが優勢をもたらした。しかし、日本はひとりひとりの選手がブロックやレシーブ、さらに地味なブロックフォローまでやり抜いていたことで、差を広げられたのではないか。しつこくボールを拾い、リバウンドから再び攻め、ラリーに持ち込みながら制する、という得意の形を展開できた。 たとえば3セット目、3-1とリードした場面で、宮部藍梨が身を投げ出してブロックフォローしたシーンがあった。チャレンジが入って、相手のネットタッチで日本の得点になったため、直接、点数には関係なかったが、味方をサポートする集中力の高さが、自らのプレーにも好影響を与えていたのではないか。 実際、この日の宮部はクイックでの得点が多かったし、サーブでもレシーブを崩していた。相手のミドルブロッカーがBスロット(セッターの右の位置)をフリーにする状況が多く、単純にセッターがトスを上げやすかったこともあるだろうが......。 ――地味なブロックフォローひとつにチームの献身が現れ、勝負の流れを左右したという仮説は? そう質問すると、宮部は優しい表情で答えた。 「ブレイクが長く続いたほうがいいので、ミドル(ブロッカー)でフォローもしっかり入って......とは思っていました。他のレシーバーが上げるのも、士気は上がるんですけど、ミドルが上げることにも意味がある、と思っています。極力、レシーブ、(ブロック)フォローに参加するようにしていますね。バレーボールは細かいプレーで明暗が分かれてくると思うので。日本のバレーは繊細さを備えつつも、丁寧なプレーも大事になるのかなと」