ヒップホップカルチャーそのものが“師”である。ラッパーISSUGI、Mr.PUGの語りから紐解く「守破離」
J-WAVEが共同プロデュースするオンラインマガジン「守破離 -SHUHARI-」。“守破離”とは剣道や茶道などの修業における段階を示したもの。「守」は、師や流派の教え、型、技を忠実に守り、確実に身につける段階。「破」は、他の師や流派の教えについても考え、良いものを取り入れ、心技を発展させる段階。「離」は、一つの流派から離れ、独自の新しいものを生み出し確立させる段階(※1)。 【過去の「守破離 -SHUHARI-」インタビュー】 そんな“守破離”と“音”を切り口に人物のスタイルをリアルに掘り下げ、オリジナルインタビューをInstagramとJ-WAVE NEWSで配信していく。 (J-WAVE NEWS編集部)
ヒップホップと「守破離」は通ずるものがある
もうすぐ2024年に差し掛かる年の瀬。今から約18年ほど前、SEEDAとDJ ISSOによるミックスCDシリーズ『CONCRETE GREEN』をリアルタイムで聴いていた者にとって、その衝撃は忘れられない。 仙人掌、ISSUGI、Mr.PUGによるMONJUである。ここ数年、ドラムループのサンプリングビートを軸とした楽曲が、ブーンバップと呼ばれるようになって久しい。彼らはオーセンティックでピュアなヒップホップビートをベースに、昨今のオルタナティブヒップホッププレイリストに分類されるような、創造性あふれるラップミュージックを自らのレーベル「Dogear Records」の旗本で、黙々と生み出し続けている。『CONCRETE GREEN 2』で紹介され、ぶっといドラムの打ち込みとともにリスナーの耳元へと登場したその瞬間から、その存在感は唯一無二。センセーショナルかつアンタッチャブルなアーティストとして、孤高のスタイルを築きあげてきた。 ヒップホップはまさに「守破離」という言葉の持つ意味に通ずる要素が数多くある音楽だ。執筆時点で国内で著名なヒップホップアーティスト同士のビーフ(抗争)が話題を呼んでいる。場外でのトラッシュトークや、相手を罵倒し自らの意思を主張する作品の応酬は、ヒップホップのひとつの側面であり醍醐味でもある。しかし、そこから実際の暴力へ発展してしまうケースがあるというのも、世界規模でヒップホップ文化が抱えている問題だ。ヒップホップが生まれて50年を迎えた。暴力性をも孕む音楽ジャンルでありながら、彼らはその創造性に魅せられ、受け継ぎ、信念とともに独自のスタイルを持ってキャリアを築いている。ISSUGIとMr.PUG、彼らにとっての「守破離」を、ヒップホップを通じて紐解いていきたい。