初戴冠でも入場者数が伸びないアビスパ福岡…Jリーグ野々村チェアマンも危惧「一般の人に価値として伝わらない」
昨季のYBCルヴァン・カップを制し、クラブ初タイトルを手にしたアビスパ福岡のホームゲーム入場者数が伸びない。今季の開幕戦の入場者数は1万人を割り込み、第3節のホーム2戦目も同節J1最少の6596人だった。Jリーグの野々村芳和チェアマン(51)に福岡の課題について聞いた。 ■6596人の入場者だった9日の試合後、サポーターにあいさつする選手たち J1の昨季平均は約1万9000人。今季の開幕をホームのベスト電器スタジアムで迎えた福岡の札幌戦の入場者数は9445人で、昨年のホーム開幕戦を下回った。それでも野々村チェアマンは「売り上げは上がっている」とチケットについてダイナミックプライシング(価格変動制)と戦略的な料金設定を組み合わせたり、スポンサー収入などを増やしたりして経営規模を拡大した福岡の策を評価する。 一方で「多くのお客さんが入ったスタジアムを見せないと、一般の人に価値として伝わらない」とも危惧する。福岡は以前、紙のチケットで無料招待をしていたが、現在はクラブの方針としてほとんどしていない。
どんな現状で、どこを目指しているか、発信を
Jリーグとしては今季開幕節から4月7日まで、リーグ戦、ルヴァン・カップで計17万人の無料招待キャンペーンを実施中。Jリーグなどのデジタル会員になることが条件で野々村チェアマンは「(無料で)ただ配っているだけで(客)単価が上がらず、売り上げが伸びないという時代があった。今はデジタルマーケティングをしっかりして、初めての人を招待して、その人がクラブのファンになるということが実現できるすべがある」と一案を提示した。 福岡は昨季、J1で下位の売上高、チーム人件費でタイトルを獲得し、リーグ戦も7位に躍進した。「今年も大丈夫と言いがちですが、簡単ではない。それだけ(昨季の成績は)難しいこと。アビスパが今、どんな現状で、どこを目指しているかをクラブが正確に発信して多くの人に伝えることで応援の仕方や関わりが変わる」と話した。
熱量のあるスタジアムの方がレベルは上がる
元Jリーガー初のチェアマンとなった野々村氏は選手としてもプレーした札幌で社長を経験。「選手の時は(北海道でテレビなどの)露出が多く、うれしくて充実していたけど、社長で戻ったら露出がほぼ野球(日本ハム)になっていて。少しでも増やすために、メディアに行ってお願いをして、できることは何でもやりました」と社長時代を振り返った。 「方法論と順番は、違っていい」と各クラブの方針を尊重する。ただ、世界に誇れるリーグを目指す方向性はぶれてはいけない。「熱量のあるスタジアムの方がサッカーのレベルは上がっていくと思う」と強調した。 福岡は16日もホームゲーム。日本代表に復帰した長友を擁するFC東京と対戦する。(向吉三郎)
西日本新聞社