基本EVだけど電欠しそうになったらエンジンで発電! 一時話題になった「レンジエクステンダー」はなぜ消えたのか?
レンジエクステンダーEVはプラグインハイブリッドの一種
EV黎明期のこと、「レンジエクステンダーEV」というカテゴリーが盛り上がった時期がありました。日本で販売されたモデルでいえば、BMW i3が代表的モデルといえます。 【画像】エンジンは発電にしか使われないのにレンジエクステンダーではないマツダのMX-30 Rotary-EVの画像を見る カーボンボディのBMW i3は、後輪をモーターで駆動するEVを基本としながら、バイク用650ccの2気筒エンジンを積んだレンジエクステンダー仕様もありました。バッテリーの充電量が不足したときにはエンジンで発電して走行を継続することができるという構造です。バッテリーのコストが高く、それでも航続距離を稼ぎたいというユーザーニーズを満たすには理想的なソリューションと評価されていましたが、BMW自身は後継モデルを用意していません。その意味ではレンジエクステンダーはオワコンといえます。 そこには「レンジエクステンダーEV」に対する厳しい条件があったのです。 基本的には外部充電したバッテリーでゼロエミッション走行、充電が不足したらエンジンを使って走る……という構造を抜き出すと、電動車両に詳しい人は「それってプラグインハイブリッドじゃないの?」と思うかもしれません。そのとおり、レンジエクステンダーEVはプラグインハイブリッドの一種です。 ただし、カリフォルニア州などの一部地域ではレンジエクステンダーEVと分類されるために、「バッテリーの充電量が不足するまでエンジンを使わない」「エンジンで走行できる距離はバッテリーの走行距離以下でなければならない」といった条件を課していました。そのため、BMW i3についても、燃料タンク容量は9リッターと小さく、あくまでエマージェンシーとしてエンジンを積んでいるという建前だったのです。
MX-30 Rotary-EVはレンジエクステンダーEVではない
こうしたレンジエクステンダーEVの条件は、「日常の近距離ユースはEV走行、休日に長距離ドライブするときはハイブリッドカーとして活用したい」というプラグインハイブリッドを求めるユーザーニーズとは相いれない部分もあります。しかも、レンジエクステンダーEVの条件を満たすことで税制や補助金などで有利という政策をとっている国や地域はほとんどないといえます。 あえて限定的なレンジエクステンダーEVの条件を満たすクルマづくりをする必要はなく、外部充電対応のそこそこ大きなバッテリーとおもに発電に使うエンジンを積むのであれば、プラグインハイブリッドにしたほうが商品力を高めることができるのが現状です。というわけで、レンジエクステンダーEVというカテゴリーは実質的に消滅したといえます。 ただし、基本的にはバッテリーで走り、航続距離を伸ばすために発電用エンジンを積む、というアプローチが過去のものになったわけではありません。 ロータリーエンジンを復活させたことで話題となったマツダMX-30 Rotary-EVは、基本的にはEVとして走り、充電量が減ったときにシングルローターエンジンを動かして発電、その電力で走行するというメカニズムになっています。 もっともMX-30 Rotary-EVの場合、バッテリー総電力量は17.8kWhとなっているのに対して、燃料タンク容量は50リットルもあります。WLTCモードでの航続距離はEV状態で107km、ハイブリッド状態で770kmと圧倒的にエンジンで走れるレンジが長くなっています。上記で紹介した「エンジンで走行できる距離はバッテリーの走行距離以下でなければならない」という条件を満たさないため、レンジエクステンダーEVとは呼べないのです。
山本晋也