Jリーグ「JAPANESE ONLY」事件の真実。その裏で起きた「八百長疑惑」。立て続けに起きた2つの事件とは
「JAPANESE ONLY」――。そこには確かにそう書かれていた
果たして、3月8日に何が起こったのか? このうち埼スタでの「JAPANESE ONLY」事件については、最初にSNS上で告発した人物に対して、私は事件のおよそ1カ月後に取材をしている。20年来の浦和サポーター、海野隆太は当時34歳。以下、彼の証言に基づきながら、当日の出来事を再現することにしたい。 「あの日は、キックオフから少し経ったタイミングで、スタジアムに入りました。前半15分を過ぎたくらいでしたか。ゴール裏コンコースを歩いていた時、あの垂れ幕の存在に気づいたんです。試合中でしたから、周りには僕以外、誰もいない状況でした」 「JAPANESE ONLY」――。 乱暴なレタリングだったが、そこには確かに、そう書かれてあった。「日本語限定」と取れなくもないが、海野はすぐに「日本人以外お断り」と理解した。 「僕もゴール裏(での応援歴)は長いので、やや過激だったり、辛辣だったりするメッセージは、わりとよく見てきました。けれども、あれくらいストレートな人種差別的メッセージというのは、初めてだったんです。『うわっ。何でこんなものがここにあるんだ? 誰が貼ったんだ?』っていうのが、最初に考えたことでした」 浦和を熱烈に応援する一方で、海野はプレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドのファンでもあった。ヨーロッパの応援文化を知悉していたため、人種差別的なメッセージに対しては、他の浦和サポーター以上に鋭敏に反応したのである。 ではなぜ、問題の垂れ幕の画像をネット上に拡散させたのだろうか。 「きちんと画像に残しておかないと、噂レベルで終わってしまう危険性があると思っていました。ツイッター(現・X)にアップしたのは、ある種の『悲鳴』みたいなものでしたね。事故なんかを目撃すると、誰でも『うわっ!』とか声が出てしまうじゃないですか。まさに、そういう感じでした」 今から振り返ると「もう少し配慮すべき点もあったかもしれません」。それでも「アップしないという選択肢はなかった」と海野は言い切る。 「なぜなら、ああいう内容のメッセージを許容してしまう空気というものが、当時の埼スタには間違いなくあったからです。なのでツイートしたこと自体、まったく後悔はありませんでした」