ジン、テキーラ、ラム…次の洋酒市場の開拓狙う大手酒類各社、背景にウイスキー原酒不足
とはいえ、ウイスキーに次ぐ市場形成で先行しているのはジンだ。IWSRによると、22年の国内輸入スピリッツ(蒸留酒)の市場規模では、テキーラの85億円(10年平均成長率7%増)に対し、ジンは161億円(同11%)で倍近い差がある。
高い市場成長を促したのは、国内のジン市場で約8割りのシェアを握るサントリーだ。国産原料にこだわった「翠(すい)」のブランドで国産のジンをヒットさせ、17年に輸入品が74%を占めていた国内ジン市場を、23年には国産シェアを65%に高め、市場浮揚のきっかけを作った。
ジンはウイスキーと工程が似ており、大規模な設備がなくても味や香りに独自性を出しやすい特徴がある。また、ウイスキーのように長い熟成期間は不要なため、早期に収益化しやすいメリットもある。
サントリーは今年、缶商品の「翠(すい)ジンソーダ」、桜花や煎茶など6つの国産素材を使った「ROKU〈六〉」で、それぞれ初めてとなる限定商品を投入するなど展開を積極化。大阪工場(大阪市)に55億円を投じ、25年までに生産能力を2・6倍に高め、30年に国内ジン市場を23年比で2・1倍の450億円まで引き上げる計画を示す。
■ハイボールでラム市場開く
一方で、ラムに成長余地を見いだすのはサッポロだ。輸入販売する英領バミューダの酒類大手バカルディのラムブランド「バカルディ」で、アサヒ同様に付加価値を高めることによる売り上げ拡大戦略を描く。
着目したのは、ウイスキーのハイボール(炭酸水割)に満足していないユーザーが約2割いるという調査結果だ。そこで、ウイスキーと同じオークたるで熟成させ、付加価値の高い「バカルディゴールド」で作るハイボールを提案。若者が集う音楽フェスにブースを出展するなどでブランド周知を図り、バカルディを取り扱う飲食店の拡大につなげる考えだ。
サッポロも、30年までに国内ラム市場を23年比で2倍の100億円規模への拡大を目標に掲げるなど、各社とも強気な姿勢で挑む。(西村利也)