二世帯住宅の悲劇 遺産相続で揉める理由とは 税理士が解説
これから二世帯住宅を建てようと計画している人もいるでしょう。その前に、遺産相続について親としっかりと話し合っておく必要があるかもしれません。きょうだいがいる場合、二世帯住宅が揉める原因になることがあるからです。二世帯住宅の“落とし穴”について、豊富な実務経験がある税理士でマネージャーナリストの板倉京さんが解説します。 【画像】親族が亡くなったあと最も困ったタイミング・トップ5 相続や不動産関連は何位? ◇ ◇ ◇
「平等に分けてもらう権利がある」 弟と妹からの要求
遺産分割でよく問題になるのが、不動産をどう分けるかということ。「子どもの数だけ不動産を持っています!」のような資産家はさておき、「不動産は自宅だけ」という人がほとんどだと思います。なかでも「自宅以外の財産はほとんどない」「きょうだいの内ひとりが二世帯住宅にして親と暮らしている」ような場合、とても面倒なことになる可能性があるのです。 「父が亡くなったときは、たいした財産もないし相続税も心配ないということで、母に全財産を相続させました。ところが、母が亡くなって遺産をきょうだいで分けることになったら、弟と妹が『財産を平等に分けろ』と言い始めたんです」 相談者は3人きょうだいの長男、高田博さん(仮名・45歳)。実家を二世帯住宅に建て替えて両親と同居していましたが、5年前に父親、3か月前に母親を亡くし、遺産分割に悩んで相談に来ました。 高田さんは父親とお金を出し合って二世帯住宅を建てていて、そのときのローンがまだ残っています。父親は建て替え費用をキャッシュで払いました。そのため、母親が亡くなったときに残っていた財産は自宅と少しの現金だけ。自宅の価値は、母親名義になっている建物部分と土地の価格を合わせると3000万円ほどになるとのことでした。 「弟と妹には、私が自宅をもらうつもりなら自宅に3000万円の価値があるのだから、ふたりに1000万円ずつ支払ってくれと言われました。『平等に分けてもらう権利がある』といって譲らないのです。まだローンが残っている身で、これから子どもの教育費もかかるというのに、そんな金額は払えません。そもそも、長男として親の面倒をみるために二世帯住宅にしたのに、こんなことになるなんて……」