【MotoGP】ディ・ジャンアントニオのシート喪失危機、若手ライダーの抱える問題を示している?
MotoGPに参戦するファビオ・ディ・ジャンアントニオは、2023年シーズン後半戦にシート喪失の危機に陥った。最終的に彼は実力を示し、VR46へ移籍しキャリアをつなぐことに成功したが、一連の騒動はMotoGPのより広範な問題を示している。 【ギャラリー】2024年に向けて本格始動! MotoGPバレンシアテスト 2022年シーズンにグレシーニからMotoGPクラスへ昇格したディ・ジャンアントニオ。最高峰クラスで2年目の戦いに挑んでいた彼は、マルク・マルケスのホンダ離脱とグレシーニ加入の決定により、10月というシーズン終盤にシート喪失の危機に晒されてしまった。 しかしディ・ジャンアントニオはそこから挽回を見せた。第14戦日本GPの8位をきっかけに、続くインドネシアGPでは4位を獲得。連戦のオーストラリアGPでは3位で初表彰台を獲得し、自分がMotoGPクラスにふさわしいパフォーマンスがあるとアピールした。 ディ・ジャンアントニオはその後カタールGPで並み居るライバルを打ち倒し、キャリア初優勝を達成。この勝利が彼の運命を大きく変え、ドゥカティの上層部もディ・ジャンアントニオにより目を向けるようになった。そして最終戦後のバレンシアテスト開催前日にようやくVR46加入が明らかにされ、ディ・ジャンアントニオはMotoGPクラスでのキャリアをなんとかつなぐことができた。 ディ・ジャンアントニオがキャリア継続の猶予を勝ち取ったことは喜ばしいことと言えるだろう。ただ彼のような苦労や困難な状況は、若手ライダーが抱えている問題を浮き彫りにするものだという指摘があることも忘れてはならない。 若手ライダーが抱えている問題は、彼らがに適応するための十分な時間が与えられていないということだ。 「MotoGPで最初に勝つまでに2年半かかったよ」 2度の世界チャンピオンとなったドゥカティのフランチェスコ・バニャイヤはシーズン序盤にそう語っていた。 「僕はMoto2で何度も勝ち、タイトルを獲得してMotoGPに(2019年に)やってきた。そしてファクトリーチームからのオファーも、適切な瞬間……そして幸運かつパーフェクトな瞬間で届いたと思う」 「2020年の2戦目のことを覚えている。僕は初表彰台に近づいていたんだけど、エンジンが壊れてそれを失ってしまったんだ。それから、ブルノで足を骨折してしまったんだけど、20日後にミサノで復帰して、表彰台を獲得できた。これはファクトリーチームへの招集に、大きく役に立ったと思う」 しかしファビオ・クアルタラロが2019年にMoto2で1勝(マシンの規定違反がなければ2勝)で最高峰クラスにデビューし、すぐに競争力を発揮したことで、期待されるものが変わったのかもしれない。 ディ・ジャンアントニオはクアルタラロ同様、輝かしいジュニア時代を過ごしてきた方のライダーではない。そして最初の2年間の多くで彼は苦労した。これはエネア・バスティアニーニとマルコ・ベッツェッキなども同じだろう。 グレシーニでディ・ジャンアントニオのクルーチーフを務めてきたフランキー・カルチェディは、MotoGPクラスに挑戦するルーキーたちの置かれている状況について、次のように語っている。 「このクラスに参加したいと思っている人にとっても、このクラスで争っている人におっっても、完璧なシステムにはなっていないと思う。全く機能していない」 「私は普段から、サッカーやクリケットなど他にパーフェクトなシステムを持つスポーツがあると話してきた。これらの種目ではチャンピオンシップの上位3名が、プレミアシップへと進む完璧なシステムがある」 「プレミアシップ(最下位の)ひとりは脱落する。それはとても、とても明確なものだ。“転送”されるウインドウがあるんだ」 「ここでは、それと同じにはなっていない。時間も無い。8年、9年と続けていて毎年ファクトリーバイクを走らせている人もいる。そしてMoto2には(MotoGPクラスへ)飛び込みたくてウズウズしている人達がいる」 「ケーシー(ストーナー)が作ったルートについて、かなり関係の深い人物と興味深い会話をしたんだ。彼は250ccクラスに乗るのにも助けが必要だったし、MotoGPクラスでも助けが必要だった。そして、彼はこれまでのMotoGPでもベスト3の素晴らしいライダーのひとりとなった。つまり、あなた方が予想できないのと同じで、Moto2には“別の”ケーシーがいるかもしれないんだ」 「ディッジャは成長を続けており、勢いは衰えていない。我々にどんなことができるかはわからないが、改善のためにできることはあると思う」
Lewis Duncan