虎党SNSで激怒。FA西の阪神決断“誤報問題”はどう影響するのか?
確かに複数回の交渉を終え吉報を待つ身だった阪神にしてみればいい迷惑だろう。さっそく報じたスポーツ紙に対して抗議を行い、現場レベルでは「この記事にある関係者っていうのは誰なんですか?」と記者を詰問していたという。 では、SNSでのコメントに多く見られるような、今後の西の決断への影響は本当にあるのだろうか。 筆者の取材でも、すでに交渉を終えたソフトバンク、横浜DeNAサイドの手ごたえは、それほど大きくない。現状では、阪神優位の流れだったとは十分に推測できる。 だが、西は「阪神入り決断」という報道をわざわざ否定した。西が、そういう行為に出た理由は、情報だけが独り歩きすることを避け、去就に注目しているファンに真実を伝えたいと考えたことと、古巣のオリックスを含めた4球団への配慮だろう。 正式な受諾、或いは、お断りを各球団に通達する前に報道が先走ることは信義に反するとも考えたのかもしれない。ある意味、西の誠実で一本気な性格を示す行動だった。 裏を返せば、西が入団前から、人気球団の阪神ならではのマスコミの洗礼を受け、そういう野球に専念できない環境に「嫌気がさす」という可能性も否定できない。阪神ならば同じ関西で住居など生活面への影響はないが、取り巻く環境は、オリックス時代とはガラっと変わる。 プロとしてやりがいのある環境とも言えるが、そういうメディアのプレッシャーは不安材料ともなる。 今オフ阪神を戦力外となった西岡剛氏も、メジャーからの凱旋時に、オリックス、ロッテら複数球団の争奪戦になっていたが、「一番プレッシャーがあり難しい球団はどこかと考え、それが阪神だったので、一番難しい道を選んだ」と、語っていたほど。阪神は、こういうマスコミ対策についても再度、西サイドへ説明しなければならないのかもしれない。 そう考えると、やはり「フェイクニュース」の影響はあるーー。 劣勢だったソフトバンク、横浜DeNAにも逆襲のチャンスは生まれただろうし、「早くしたい」と考えていた西の決断時期も遅れることにはなるだろう。 実際に人気球団の阪神では、過去に先行報道によって内定していた話が潰れてしまったというケースは少なくない。 水面下で進行していたトレードや監督人事が、報道が先走ったため、ファンや関係者の反感を買って潰れた場合や当事者が不信感を抱き、ご破算になった場合もある。 FA移籍を巡っては、報道が原因で移籍先が変わったような例を聞いたことはないが、まるで“出来レース”のように報道されることを選手が極端に嫌うことは確かだ。 近年、インスタなどSNSにより選手が情報発信するケースが増えてきたが、西の行動が、従来型のメディアのあり方に、一石を投じたことも事実。 通算74勝の計算の立つ先発右腕が来るか、来ないかは、今オフの補強が停滞している阪神にとっては死活問題。「誤報問題」を笑い話にできるエンディングが待っていればいいのだが……古巣も含めた4球団の西争奪戦は予断を許さない状況になった。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)