不動産劣後債、驚異の75%リターン-上位銘柄はエヌビディア超え
(ブルームバーグ): これまで債券市場の暗い一角にあったハイブリッド債(劣後債)が、グローバル金融市場で最大の勝ち組トレードとなった。リターンは過去10年余りでトレーダーがほとんど見たこともないほどの水準に達している。
不動産会社の債務の中で最もリスクの高いハイブリッド債は、今年これまでに75%強のリターンを記録。トップ10の銘柄はこの間のリターンが約170%と、人工知能(AI)ブームの寵児(ちょうじ)であるエヌビディア株のパフォーマンスを20ポイント上回った。
これは、コロナ禍後の金利上昇と働き方の変化で世界中の不動産オーナーが苦境にあった時期にはほぼ誰も想像できなかったような急転換だ。主要中央銀行がインフレ抑制から景気優先に方針転換し、利下げに動いたことで、不動産関連債が早くも恩恵を受けつつある。
2008年の世界金融危機のさなかに金融業界に入ったレッドヘッジ・アセット・マネジメントのアンドレア・セミナラ最高経営責任者(CEO)は「私のキャリアの中で、似たような状況を思い出せない。純粋にディストレストな状況でない限り、これほどの上振れの規模は前例がない」と振り返った。
22年に各国・地域中銀が利上げ局面に入って以後、不動産オーナーの劣後債価格は約50%急落していた。金利高は借り換えコスト上昇を意味し、返済がいつまでも先送りされるのではないかと投資家は不安になった。企業はデフォルト(債務不履行)のトリガーとならない利払い見送りが可能であり、投資家の間で人気が低下した。
セミナラ氏にとって、ディストレスト水準での債券購入は、企業が償還期限を迎える債務を借り換え、インフレ鈍化で中銀も利下げが可能になるという読みに基づくもので、いずれも正しかった。
企業が直面していた「満期の壁」は今年に入り崩壊した。信用市場に資金が流入し、不動産オーナーは新たに債券を発行し借り換えを行った。欧州中央銀行(ECB)やイングランド銀行(英中央銀行)に続き、米金融当局も今月政策金利引き下げを決め、大幅な追加利下げの可能性を残した。