「復帰を決めた恩師からのLINE」引退も考えた樋口新葉が明かす…かつて“天才少女”と呼ばれた23歳のGPシリーズ初優勝「成長を感じました」
大喝采をあびたステップシークエンス
SPは4位スタートだった。フリーでは予定していた3ルッツ+3トウループが3+2になり、シークエンスにするはずだった2度目の3ルッツの着氷が乱れた。だがその後しっかりリカバリーをし、最大の見せ場は後半のケイト・ブッシュの「神秘の丘」のメロディに合わせたステップシークエンスだった。ジュニアの頃から定評のあったスピードのあるスケーティングを生かし、体全体を大きく使った滑りは美しく、迫力があり、観客からも喝采を浴びた。 「練習では3+3のコンビネーションが良かったので、自分でもどういうミスで(ルッツの)後ろのトリプルが跳べなかったのかわからないんですけど、その後、気持ちを引きずらずに最後まで滑りきれたのが、本当に今までの成長を感じました」と演技を振り返った。
「表彰台決定です」「えっ?えっ?」
演技後、ミックスゾーンで樋口が記者陣に対応しているうちに、SP3位だった渡辺倫果の演技が終了し、樋口の方が総合スコアが上であることが判明。記者に「表彰台決定です」と告げられた瞬間、「えっ? えっ?」と驚きの声をあげて絶句した。 さらに続いてSP2位だったアメリカのブレイディ・テネル、SP1位だったイザボー・レヴィトともジャンプミスなどが出て、樋口の初優勝が決まった。初めて表彰台の頂点に立ち、聞いた「君が代」の感想を聞かれると、 「全然慣れてなかったので……いつもおこぼれみたいな感じで君が代を聞いたりしていたので、自分の結果で表彰台の一番上に乗ったりというのは新鮮でした」と笑顔を見せた。
樋口を氷上に戻した“コーチからのLINE”
北京五輪の翌シーズンは怪我で休養し、昨シーズン復帰したものの全日本12位と厳しい結果になり、競技引退も頭をよぎっていたという。 「怪我もあって、メンタルがどうにもならない状態だったので、休養を選んだんですけど……休養というよりそのまま消えようと思っていたので、戻ってきたのが(自分でも)びっくり」と語る。そんな彼女を氷の上に戻したのは、子供の頃から指導を受けてきた岡島功治コーチからの連絡だったという。 「先生から、『いつから練習来ますか? 』とLINEがきた。とりあえずリンクに行ってみて、ちょくちょく先生から、『明日は練習来ますか? 』とか……一緒に練習している子たちからも、『いつリンクに来ますか』と連絡をもらっていたので、リンクに行かなくちゃいけなくなって」と笑いながら樋口は語る。 「最初はしぶしぶ、何のモチベーションもなくやっていたんですけど、そこから面白いかもと思えるようになってきて……」
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