誇り高き「銀行員」じゃなくなる前に…苦節20年、年収1,000万円の49歳「出向」目前課長、“いましか買えないもの”を手に入れた末路【元メガバンカーの助言】
小林の家族
小林は銀行に転職する前年に結婚した。結婚してすぐに転職という形となったが、銀行への転職ということで妻の両親も反対することなく大変喜んでくれた。転職してから忙しい日々が続いたため、第一子が誕生したのは小林が33歳のときであった。 その後、35歳で第二子が誕生し、今年それぞれ17歳(高校2年生)と15歳(中学3年生)になる。妻は下の子供が中学生となった3年前からパートに出てくれているが、収入は小林の扶養家族の範囲内に抑え、年収100万円程度である。 子供達には将来の選択肢を広げてほしいとの思いから、それぞれ中学受験を経て中高一貫校の私立へ通っており、かなりの学費がかかっている。また、下の子供が産まれて家が手狭となったことから37歳のときには自宅を購入した。 リーマンショックや震災などもあり、不動産市況はいまと比べれば安く購入できたとはいえ、ローンもまだ4,000万円程度残っている。毎月の住宅ローンの負担は大きい。 小林の年収は現在1,000万円程度あるが、所得税などの税金のほか生活費、学費、ローンなどの支払いにより、おおむね収支はトントンである。さほど贅沢をしているわけではないが、同僚や友人との飲み会やゴルフなど遊行費もあり、老後の資金もこのままでは不足するのではないかと思う。 顧客に対しては、保険や投資信託、NISAなど老後資金の確保を提案している一方で、自身が十分に準備できていないことに矛盾も感じている。
たそがれ研修への参加
「セカンドキャリア研修」通称「たそがれ研修」へ参加することとなった。以前から研修内容について先輩方から話を聞いていたが、自らいくつかのプログラムを経験して感じたことは、 ・銀行から離れたあとを想像し、いまから準備をしておくこと ・給料が下がっても生活が成り立つような準備をしておくこと の主に2点であり、銀行から離れたあとの心構えを持つことが主な内容であった。 すでに出向を経て転籍をされた先輩からは、給料は銀行のころの6割~7割と聞くことが多い。うまく就職先を見つけて外部へ移った人で、収入の現状維持ができているという話も聞く。しかし、50代からの慣れない業務で心身ともに過酷な状況にあるとの話も珍しくはない。 小林も自身に当てはめて考えを巡らせてみたが、銀行に転職した若いころとは異なり、明らかに50代に近づき気力や体力も低下してきていることから、慣れない業務や新たに人間関係を築いていくことに対し、大きな不安を感じた。 おそらく、次の人事異動においては出向先について具体的な提示があるだろう。これから子供の大学受験にかかる費用やその後の学費など、本当に払っていけるのであろうかとさらなる不安が押し寄せてきた。 なんとか収入を支える術はないのか… 小林はその後ネットや動画などで副業について調べ始めた。怪しい内容も非常に多かったが、そのなかで「不動産投資」に興味を惹かれた。動画では、 ・不動産は24時間365日稼働してくれる ・フルローンで調達できれば元手を少なく賃料と経費(ローン返済も含む)の差額でプラスの収支を得られる ・ローンに付加される団体信用生命保険により、生命保険代わりにもなる といった内容が述べられていた。もしかしたら、転籍後の収入減少を不動産収入で補えるのではないかと考え、ネットで不動産投資セミナーを行っている会社を調べて休日に参加することにした。 友人や同僚間で不動産投資の話をすることもなかったため、参加にあたって不安はあった。一方で自分はこれまで銀行員として、ローンや不動産について支店の融資課などと話をする機会もあったため、それなりに理解している。……つもりだった。 セミナーへの参加 不安を抱えながらも当日セミナーへ参加した。参加者を見渡すと30代くらいから70代くらいまで幅広い年齢層が参加していた。同年代も参加しており、同じような悩みを抱えているのだろうなと勝手に親近感を覚えた。ひととおり不動産投資におけるメリットやデメリット(空室リスク、災害リスクなど)の説明を受けたあとは、具体的な物件の紹介が始まった。 ワンルームマンションから一棟のアパートなど幅広く提案があったが、小林は最初の投資の検討とのこともあり、まずはワンルームマンションで試してようかなと考えていた。その後、いくつかのアンケートに回答し、担当者から名刺を受領。その日は帰宅した。