大事にしたいのはオリジナリティ。前田美波里「“ここにしかない”舞台に関われる誇り」
資生堂のキャンペーンガールとして一世を風靡した当時から、圧倒的な存在感とキラキラとした輝きを放ち続ける前田美波里さん。インタビュー前編では、美波里さんが今どハマりしているという水泳についてお話を伺った。後編では、日本のミュージカルへの長年の功績が評価され、先日、菊田一夫演劇賞特別賞を受賞した美波里さんが、初めて挑戦するという「朗読劇」への思いを聞いた。 【写真】前田美波里が大会に出場するほどにハマっている趣味とは
恐怖心と戦いながらも「幸せ者だな」
すっかり水泳にハマっている美波里さんは、飛び込みのようなフィジカルに特化したことなら、急な挑戦でも恐怖心をほとんど感じないという。その一方で、ライフワークとしての舞台に立つ前は、毎回、いろんな恐怖心と闘っている。 「前の晩に、セリフを忘れた夢や遅刻した夢を見ることはしょっちゅうです。いざ舞台に上がってしまえば、邪念は吹っ飛びますし、お客様からの拍手や喝采をいただいたときには、日常生活では味わえないような深い感動に包まれます。でも、準備の段階では、『大丈夫だろうか? 』と不安になることばかり。 今回も、初めて朗読劇に挑戦することになって、もう今から『どこを読んでいたか分からなくなったらどうしよう? 』という悪夢にうなされています(苦笑)。今までの舞台では、体にセリフを叩き込んでから舞台に立つことが当たり前だったのが、朗読劇では、目はちゃんと台本に置きつつ、ベストのタイミングで、客席の方にも顔をあげたりしなければならない。目も悪くなってきているし、どんなミスをするか、上手くいった先に、どんな感動が待っているのか。何もかもが未知の世界です。でも、常に新しいことに挑戦できるお仕事なので、恐怖の隣にいつもワクワクがあったりして……。舞台のことで悩んだり、苦しんだりできている自分は、とても幸せ者だなと思います」
劇団四季のオーディションを受けたのは29歳のとき
日本のミュージカルへの長年の功績が評価され、先日、菊田一夫演劇賞特別賞を受賞した美波里さんだが、「ミュージカル」の世界へ飛び込もうと決めたのは10代の頃だった。幼少期からクラシックバレエを習っていた美波里さんは、好きな踊りを活かした仕事がやりたくて、芸能界に入った。デビューはミュージカルだったが、資生堂のキャンペーンガールとして一躍人気者になってからは、なかなかミュージカルの仕事は入ってこなかった。 「待てど暮らせど、やりたかったミュージカルの仕事のオファーは来ない。それで、一念発起して劇団四季のオーディションを受けてみようと思いました。それまでは、『落ちたらどうしよう、恥ずかしい』なんて思っていたのですが、『待っていても道は開けないのだから、一度ぐらい恥をかいてみよう』と思って。勇気を振り絞ったんです」 2013年からは、堂本光一さんが作・演出・主演を務める日本発のオリジナル・ミュージカル「Endless SHOCK」のオーナー役としても活躍している。帝国劇場が改装することをきっかけに、「Endless SHOCK」の上演は今年限りと発表されたが、11年前、オーナー役のオファーがあったときは、「この、世界のどこにもない、日本発のミュージカルに出来るだけ貢献したい」と思ったそうだ。 「11年前の時点で、もう10年以上続いていた舞台だったので、私のような新参者があれこれ言うのは憚られましたが、それでも日本人が作った、あの劇場でしかできない唯一無二のミュージカルを、もっともっと魅力的なものにするためにできるだけのことはしたいと思って。いくつか思ったことは意見させていただきました。光一さんはとても研究熱心で、とても謙虚でクレバーで、私のアイデアもいくつか採用してくださいました。回を重ねるごとに熱量や魅力が増していく特別な舞台に参加できたことを誇りに思います」