各国で活躍のギタリスト吉田佳正さんが故郷で無料リサイタル 鴨川・小湊誕生寺(千葉県)
鴨川市小湊出身で、ドイツ在住のギタリスト、吉田佳正さん(62)による無料リサイタル「DIE HEIMAT 故郷」が、同市の小湊誕生寺で開かれた。300人を超す地域住民らが吉田さんの奏でる情感あふれる演奏に聞き入った。 吉田さんの実家は、小湊の温泉旅館「魚彩和みの宿 三水」。「佳正」の名は、誕生寺に命名してもらったという。両親の影響で、幼い頃からクラシック音楽を愛するようになり、クラシックギターの道へ。日本ギター音楽学校、ドイツの国立ケルン音楽大学アーヘン校、同大大学院を卒業した。 17カ国で、ソロのリサイタルやオーケストラとのコンチェルト共演など演奏活動だけでなく、国際ギターコンクールの審査委員長、フェスティバルの主催、音楽監督など、多岐にわたり活動。1996年には「ドイツ国家演奏家資格」を授与された。現在は、ドイツ・カイザースヴェルト音楽学校ギター科主任、デュッセルドルフ・ドルマーゲンギター音楽学校主宰、国際新堀芸術学院客員教授を務める傍ら、欧州を中心にコンサート活動をしている。 「故郷でコンサートを行いたい」との吉田さんの希望を受け、友人で小湊在住の馬淵俊行さん(54)や有志が企画し実現。「名付け親」である誕生寺も会場提供で協力した。 リサイタルは、日蓮聖人像が特別に開帳された祖師堂を会場に、「プレリュード」で幕開け。美空ひばりの「川の流れのように」のジャズアレンジなど親しみやすい楽曲や、ラテン調で情熱的な「アストゥリアス」、キューバの作曲家レオ・ブローウェルの哀愁漂う名曲「11月のある日」など、解説を交えながら、ソロ5曲を情感たっぷりに演奏した。 ラストの演目は、4楽章から成り、だんだんとテンポが速くなっていく、17分にわたる組曲「コユンババ」。終盤には超絶技巧でつくりだす音の波が、外房の荒波のように押し寄せ、観客を魅了。最高潮を迎えてフィニッシュすると、会場から拍手とアンコールが鳴り響いた。アンコール曲には、ホーギー・カーマイケルの「わが心のジョージア」を選んだ。 吉田さんは「小湊の海や里山がどれだけ自分の音楽性に影響しているか。55年ぶりに故郷に戻り、地域の皆さまにギターを披露できる。感慨深い気持ちでいっぱい」と思いを語った。 また、日本ギター音楽学校時代の先輩であり、友人でもある同市在住の岡戸耕作さん(69)も友情出演。吉田さんとの二重奏などで楽しませた。 聞き入っていた小湊の70代女性は「地元なので、吉田さんのお話は伺っていたけど、実際にご本人を見て、演奏を聞くのは初めて。本当に素晴らしい演奏で、感無量の一言に尽きます」とうっとりとした表情だった。 (前木深音)