英与党は負け覚悟、歴史的惨敗の阻止に躍起-7月選挙は裏目の様相
(ブルームバーグ): スナク英首相の顧問らは、しばらく前から総選挙で勝利できる可能性が低いことを認識していた。首相が最悪のシナリオに向かっていることが今週の内部調査で確認されると、顧問らは口には出さないものの敗北を受け入れ、保守党の存続確保に焦点を移した。
事情に詳しい関係者によると、保守党は約2週間後に迫った総選挙の見通しについて独自の分析を実施。結果は、世論調査が現在示唆するようにスターマー党首率いる労働党が議会過半数を最大100議席上回る歴史的勝利を果たすというものだった。この数字について報告を受けた保守党の重要閣僚は、英軍史上最も多くの犠牲者を出した第1次大戦の激戦「ソンムの戦い」に今回の総選挙を例えた。
スナク政権の閣僚の多くがまだ総選挙の計画を知らなかった時に複数の首相側近が選挙日程を予想するギャンブルに興じ、7月4日に賭けていたことも明らかになるなど、保守党内部でも幻滅感が深まる。これは今月初めに開かれた第2次世界大戦中のノルマンディー上陸作戦(Dデー)記念式典を首相が途中退席したのと同じ類いの失態で、保守党は国民への奉仕に力を注いでいないという否定的な見方を強めてしまった。
ある世論調査では英国史上初めて現職首相が落選する可能性も示唆され、首相の選挙区すら、もはや完全に安全ではないとの懸念が保守党関係者の間に広がっている。匿名を条件に語った複数の関係者によると、閣僚の半分余りに深刻な落選リスクがあり、そうなれば英国の政治史で初めての事態になる。
こうした状況に後押しされ保守党の選挙対策本部は19日、前回選挙で過半数の票を得て当選した多くの党所属議員の選挙区から、以前は完全に安全だと見なしていた選挙区に資源を移す決定を下した。これまで同党の牙城としていた地域での明らかな撤退で、労働党はこれに対して以前は勝ち目がないと考えていた保守党現職の一部選挙区に大量の選挙運動員を送り込み、選挙戦最終盤に攻勢を強める構えだと、党関係者が説明した。