柚香光に訪れた好機。パリ・オペラ座の貴公子マチュー・ガニオとの共演へ
宝塚歌劇団の花組トップスターとして活躍し、2024年5月に退団した柚香光(ゆずかれい)。彼女の2025年はパリ・オペラ座のエトワールであるマチュー・ガニオのスペシャル・ガラでの共演から始まる。どんな踊りで魅せてくれるのか。 写真多数!柚香光の美しき舞
◆徹底的に“自分”と向き合う日々 ――宝塚歌劇団を退団され、“柚香光”としての新たな道を歩まれていますが、退団後の変化や今の心境をお聞かせください。 柚香光(以下柚香): 宝塚歌劇団では男役でしたが、“男性から女性に戻る”というよりは、宝塚歌劇団で育てていただいて培って、形成した“柚香光”としての技術や備わった武器を大事にした上で、これからは俳優として、舞台のエンターテイナーとして、どういうふうに自分を打ち出していくことができるのかということを感じています。今までやってきたことをしなくなるというのではなく、自分の個性とは何か、何が自分の魅力なのか、改めて自分と向き合っているという感じですね。自分を理解していないと磨くこともできませんし、フィールドを広げたり、新たなご縁にも出会えたりしないので、探しながら、学びながら、鍛錬しながら歩んでいます。 ――トップスターとしてのご自身と今のご自身ではどういう違いを感じていらっしゃいますか? 柚香: あの大きな“羽根”を背負っているか、いないかは確実に違います。羽根を背負うということは組を代表しているということなので、80人近くいる組の生徒たちのことを考えながら舞台に立っていました。生徒は年齢もさまざまですし、一人一人に個性があってすごく大事な存在でしたので、その立場から離れたということは圧倒的に違うと感じています。 ――退団後の初めての舞台は9月に行われたソロコンサートでした。その第一歩を踏み出して、はっきり見えてきたものは何かありましたか? 柚香: 卒業して初めて、肩書きのない個人として舞台に立って、“舞台が好き”だということを改めて自覚しました。やっぱり好きなんだと心底思ったんです。何の飾り気もない率直な自分の気持ちだったので、舞台好きであることを実感できたことが、自分にとって大きな気づきとなりました。お客さまとのコミュニケーションもすごく好きですし、アクターの方々、シンガーの方々と一緒に舞台を作っていくことを通して、何かが作用し合って、空気が一気に盛り上がる瞬間だとか、心地の良い緊迫感が生まれる瞬間とか、何かがほとばしる瞬間を体感することができる。その一期一会の“瞬間”と出会えることがすごく好きだと思いました。 ◆身体表現を通して得た喜び ――柚香さんは3歳の頃からバレエを始められたそうですが、どんなきっかけだったのですか? 柚香 私がダンスの世界に足を踏み入れたのはクラシックバレエが最初で、本当に“バレエ少女”でした。近所に住んでいたお姉さんがシニヨンで髪を結んでバレエのお稽古に通われている姿に憧れを抱きまして、“私もやってみたい”という風になったのがきっかけで、それから宝塚に入るまで続けていました。ずっと続けたのはクラシックバレエとピアノだけでしたので、クラシックバレエは自分にとってすごく大事な存在でした。 ――「マチュー・ガニオ スペシャル・ガラ ニューイヤーコンサート」へオファーがあったときのお気持ちをお聞かせください。 柚香: バレエ界の貴公子で、パリ・オペラ座バレエ団のエトワールとして牽引されてきた方なので、もはや伝説のダンサーみたいな感じもします。生の舞台は宝塚に入る前と、まだ宝塚歌劇団の下級生だったときに拝見したことがあります。その後はほとんどが映像でした。そのような偉大な方と共演させていただくなんて、全く想像もしていませんでしたし、こんなご縁ができるとは思ってもみなかったので、“本当に私でいいのですか?”という感じはあります。 ――マチュー・ガニオさんも2025年4月にパリ・オペラ座バレエ団を退団することが発表されています。マチューさんにとっても一つの節目を迎える時期にありますが、そういう意味で柚香さんがマチューさんに共感することはありますか? 柚香: 私自身15年間、劇団生として活動して、それ一筋でやってきましたが、退団するということはそれをなくしてしまうのでも、留まるのでもなく、自分の中に何があるのかを改めて考える機会になりました。自分の中に何があるのか、何が好きで、何がしたいのかを見出して、私のこれを見てほしい、こういうことができるのでこれを表現したいという行動へと移す。今回のスペシャル・ガラもマチューさんご自身の“アデュー公演(パリ・オペラ座バレエ団の退団公演)”を控えている大事な時で、これまでにない表現に挑まれているとのことなので、そういう視点で考えると、もしかしたら退団後の私と通じるところがあるかもしれません。マチューさんにとって大切な公演なので、そのお名前を汚さないよう努めます。 ――今回の撮影を拝見して、柚香さんの内側から出てくるパッションのようなものを表現していただいていると思いましたが、ダンスで表現することは柚香さんにとってどういう意味があるとお考えですか? 柚香: 私は、身体表現することが好きなのだと思います。バレエをはじめとしたダンスはもちろんのこと、歌もお芝居も身体表現ですので、そういうものがすごく好きだと自覚しています。自分でこういうものを表現したいという内側から湧き出てくるものもありますが、音楽や振り付け、お芝居や台詞、歌を通して引っ張り出してもらう時もあるので、そのどちらもすごく楽しいですね。 クラシックバレエを習っているころは“表現する”ということを全然理解していなくて、もっと上手くなりたいとか、こういう体のラインができるようになりたいとか、もっと高く飛びたいといったことを目指してレッスンしていました。私が好きな身体表現はその一つ先にあると思います。踊り一つとっても、それには歴史があって、知れば知るほどその奥深さに心が惹かれて、もっともっと学びたい、もっといろいろな世界を知りたいという思いが膨らんでいきます。自分にとってダンスは切り離せないものだと思います。学んだり拝見したりすることで踊りのいろいろなジャンルに触れることがすごく好きです。 ――今、プライベートな時間で何か取り組んでいることはありますか? 柚香: 自分のことを考える時間がすごく増えたと思います。退団する前は組のことや作品のこと、組のみんなのことなど、ほとんどの時間を宝塚歌劇団について考えていましたが、今は新しい道を歩み始めるということで、いったん、自分と向き合い、今までを振り返って、長所や短所など、しっかりと腰を据えて向き合う時間を過ごしていると思います。 ――ご自分にとってご褒美としているものは何ですか? 柚香: 愛犬との時間が増えました。ポメラニアンの9歳の男の子なんですが、公演がない時は以前よりも一緒にいられるようになりました。それが大きいですね。 柚香光(ゆずか・れい) 東京都出身。2009年に宝塚歌劇団に95期生として入団。花組に配属される。2019年11月に花組トップスターに就任し、大劇場トップお披露目公演の『はいからさんが通る』や『うたかたの恋』などを経て、2024年5月に『アルカンシェル~パリに架かる虹~』をもって退団。同年9月に退団後初となるソロコンサート「Ray Yuzuka 1st Solo Concert『TABLEAU』」が開催された。 スタイリスト/YOSHI MIYAMASU(SIGNO)・ヘア&メイク/美舟(SIGNO) 衣装:ジョルジオ・アルマーニ BY SHION YAMASHITA
「マチュー・ガニオ スペシャル・ガラ ニューイヤーコンサート」 出演者:マチュー・ガニオ 柚香光 アマンディーヌ・アルビッソン ジャコポ・ティッシ パブロ・レガサ シルヴィア・サンーマルタン 上野水香(スペシャルゲスト) (大阪公演) 会場:フェスティバルホール 公演日時:2025年1月3日 14時 (名古屋公演) 会場:Niterra日本特殊陶業市民会館フォレストホール 公演日時:1月6日 14時 (東京公演) 会場:NHKホール 公演日時:1月7日 18時 問合せ:キョードーインフォメーション TEL. 0570-200-888