統一戦消滅、米国第2弾中止でバンタム転向の井上尚弥が年末に誓う集大成
「ディフェンスを強化している。より打たさずに打つボクシング。バンタムになるとダメージが違ってくるので」。年末の試合に向かいながらもバンタム転向への準備も始めている。 そのひとつがディフェンス力の強化だ。 この日、フェザー級の元フィリピンランカーと行った3ラウンドのスパーでも、ブロッキングで防ぎ、パーリングで弾き、足をつかったステップバックで外す、というバリエーションにとんだディフェンスを美しく使い分けた。 「意識しているのは打ち終わりの空間ですね。頭の位置。それと大事なのは足でかわすこと。ブロッキングに頼ると、その上からでも打たせるとダメージが残り、リズムも狂う」 そのディフェンスの技術論にも、さすがの薀蓄があった。 試合2週間前で疲労の蓄積からか、若干スピード感には欠けたが、破壊力は相変わらず。ここまで消化したスパーはトータルで44ラウンドと少ないが、父で専属トレーナーの真吾さんも文句のつけようがない。 「トータルでレベルアップしている。こっちがアドバイスを送ろうと思ったときには、もう動いて、こちらがやってほしいことをやっている。今までとは違う」 たとえば、相手が隙を見せているのに「いかない」、フェイントをかけねばならないときに「やらない」、と、真吾トレーナーから見て、ここまでは「つめておきたい間があった」のだが、今は、アドバイスを口に出すより先に動いているという。 10月に第一子となる長男が生まれた。 実家に預けることが多く、井上の自宅にいたのは1週間くらいだというが、お風呂にいれ、パパぶりも発揮。そのふれあいの中で、背負うものが増えたと感じた。 「子供が生まれて生活はガラっと変わった。基本、誰のために戦うわけではないし、そこは変わっていない。でも、家族が増えて負けられないという気持ちは出てきた」 「孫にはおじいちゃんとは呼ばせません」と、報道陣を笑わせた真吾トレーナーも、「ナオにも秘めたものがあると思う」と見ている。