障がい者の“きょうだい”に生まれて 自閉症の弟の存在を友人に隠し、進学先は県外を選択「可愛いけど恥ずかしい」「自分の運命を呪った」障がい者の兄弟姉妹の苦悩
重い自閉症と知的障がいのある弟と一緒に、アートビジネスを立ち上げた男性がいる。絵を描くのは弟。個展の開催や販売などを兄が行う。二人三脚で歩む2人だが、兄は弟の存在を長い間“隠して”いた時期があった。障がい者のきょうだいに生まれたからこそ感じる悩み、葛藤、そして気づきがある。 【写真で見る】独特の色彩感覚が多くの人を魅了する宏介さんの作品 中には100万円の値が付いた作品も
弟が絵を描き兄が販売する
福岡県に住む太田信介さん(49)。2012年、重い自閉症と知的障がいがある7歳年下の弟・宏介さん(42)と共に起業し、2022年「ギャラリー宏介」として法人化した。 幼い頃から手先が器用で画才を開花させた宏介さんが絵を描き、兄・信介さんは社長としてマネージメントや営業活動を行う。個展を年に6回以上全国で開いているほか、絵をレンタルする事業や販売を行い、信介さんの家族や宏介さんが暮らすには充分の利益を上げている。
独特の色彩が目を引く絵画
2023年12月に熊本市の中心部・上通りにあるギャラリー「アートスペース大宝堂」で開かれた個展。 長崎バイオパークで見たイグアナはブルー、旭山動物園のシカはオレンジ色で描かれており、宏介さん独特の色彩感覚が多くの人を魅了した。中には100万円の値が付いた作品もある。
「奇声をあげる弟を隠したいと思っていた」
宏介さんのアトリエは福岡県太宰府にある実家。母と一緒に暮らしている。そこに兄の信介さんが顔を出す。 兄・信介さん 「宏介、北海道の動物の絵、売れたよ!」 弟・宏介さん 「ありがとうございますっ」 宏介さんの楽しみは、製作の都度に兄から手渡されるギャラだ。 兄・信介さん 「宏介、はい、これ今回の分」 弟・宏介さん 「ありがとうございますっ」 大きな声で礼を言い、封筒ごとポケットへ。「何に使うんですか?」という筆者の問いに、宏介さんは絶妙な間をためて「内緒です!」とこたえた。毎日通う福祉作業所で仲間からウィットに富んだ会話を覚えてくるそうだ。仲睦まじい太田さん兄弟だが、思春期の頃はそうではなかったという。 太田信介さん(49) 「弟が奇声をあげて物を叩くので、周りの人がびっくりして逃げていくんですね。僕も白い目で見られる・・・まあ、僕はとりあえず遠い所に行きたいな、弟の存在を隠したいなっと思ってました。」