あなたの知らない札幌《酒ミュージアム》後編 市民賄える豊富な伏流水
【北海道・札幌】人口200万人の声も聞こえる北の大都市・札幌。その札幌には、多くの観光地や名物施設があります。とはいえ、札幌市民ですらそれらのすべてを知っているわけではありません。そこで「あなたの知らない札幌」と題した企画をスタート。第11回後編は、「酒ミュージアム」(札幌市中央区)を運営している日本清酒株式会社の営業管理部・広報企画課の櫛引はるかさんに、同施設ならではの商品について伺いました。(取材・構成/橋場了吾)
“札幌の地酒”の仕込み水は200年かけてしみ込んだ伏流水
酒ミュージアムを入るとすぐにあるのが、日本清酒が製造している日本酒銘柄『千歳鶴』の命ともいえる仕込み水の試飲コーナーです。この仕込み水には、札幌南部の山々に200年という長い年月をかけてしみ込んだ伏流水を使用しています。地下150mからくみ上げているのですが、常に摂氏4度という水温が保たれ、滑らかな口当たりが特徴の水です。 日本酒造りには鉄分とマンガンは大敵となるのですが、その2つの成分が入っていない、日本酒には最適の水質となっています。 この伏流水の存在こそが、日本清酒が“札幌の地酒”にこだわっている一番大きな理由です。実は、酒ミュージアム付近一帯は札幌市の指定井戸にもなっていて、万が一水不足が起こった時でも札幌市民の水を賄えるだけの貯蓄はある場所でもあります。
海外からの観光客に人気の商品とは?
酒ミュージアムは、“札幌の地酒”の歴史を知ってもらうとともに、日本清酒の商品の販売も行っています。デパートやスーパーで販売されている商品はもちろん、この場所限定商品もたくさんあります。 そのひとつが「酒粕アイスクリーム」(ソフトクリームもあり)。このアイスには、千歳鶴の醸造過程でできた大吟醸の酒粕を使用し、独特の香りと甘みのある仕上がりとなっています。夏場は日本酒よりも人気があるという商品です。北海道で酒粕を使ったアイスを販売しているのは、ここだけですね。 また、オリジナルの風呂敷がセットになった大吟醸・吟醸もここ限定の商品です。白地に鶴が描かれている風呂敷と、滑らかさが特徴的な白い瓶を採用しているのですが、日本らしさにあふれていることもあり、海外からの観光客に特に人気があります。 面白いのは、欧米からの旅行者とアジアからの旅行者では人気のある日本酒が違うこと。前者は瓶の色使いやデザインが鮮やかなもの、後者はラベルに金文字を使用しているものを好む傾向があるようです。
新社長・新杜氏による日本酒造りがスタート
2014(平成26)年12月に新社長が、今年7月には六代目杜氏が就任し、新しい体制で日本酒造りを進めています。今後、千歳鶴が“札幌の地酒”としてもっともっと認知度が高まるよう、酒ミュージアムからもさまざまな発信をしていきたいと考えています。 そして、札幌の皆さんに「日本酒といえば千歳鶴」と思ってもらえるような日本酒になるよう、美味しい日本酒造りを継続していきたいと思います。