料理動画が“大バズリ” 学生寮の若き3代目の挑戦 寮の一角にカフェやバーも!? 北海道江別市
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江別市に、ユニークな取り組みで注目を集める学生寮があります。祖父の代から受け継ぐ、若き3代目経営者の狙いとは? からっと素揚げした野菜と、じっくり煮込んでホロホロになった骨付きチキン。完成したのは、道民のソウルフード・スープカレーです。本格的な料理が提供されているのは、レストランではなく学生寮。 寮生:「充実していると思います。食べやすかったり、ご飯とかおかわりし放題なので十分食べて満足してます」「いつも、凝っているメニューが出てきて、すごい感動してます」 江別市にある「拓北寮」。周辺の大学や高校に通う学生、およそ160人が暮らしています。大きな鍋で野菜を炒めているのは、寮長の長瀬祥治さん(38)。そばにはスマホが。何やら撮影をしているようですが…。 長瀬さん:「スープカレーを作っている動画です。インスタに上げるやつですね」 その動画がこちら。調理の様子をイチから撮影し50秒ほどの動画に編集。去年の春から、料理動画をSNSにアップし始めました。 同時に4つのフライパンを使いこなして作るチャーハンに、削りたてのパルメザンチーズがのったボロネーゼパスタやローストビーフなど。学生寮らしからぬ本格的な料理や、160人分の料理を作る豪快さが注目を集め、再生回数は多いもので120万回を超えています。 長瀬さん:「目立ちたがり屋だからですよね。でも、やっぱり作る過程を見ていただきたい」 こう話す長瀬さんですが、動画を投稿するのには「別の思い」もありました。 長瀬さん:「遠方の保護者さんが安心するのは、やっぱり作ってる過程だと思っているので、それを意識して作っています」 大学1年生の娘が寮に住んでいるという、福岡県の母親は…。 母親・鈴木日鞠さん:「離れていて一番心配なのが健康。栄養をちゃんととれているのかな、というところだと思う。調理の動画が見られたり、すごくいいんじゃないかなと思いました」 祖父の代から拓北寮を営み、寮で生まれ育った長瀬さん。子どものころから寮の仕事を手伝い、料理の腕を上げました。高校卒業後は京都の大学に進学。その後、不動産会社に就職しましたが、26歳でオーストラリアに渡り、ホテルのレストランで料理人として2年間働きました。江別に戻ることになったきっかけは、母・るり子さんからの1本の国際電話でした。 長瀬さん:「『ちょっと継いでくれないか』と連絡をいただいて」 夫が病に倒れてからおよそ10年、学生寮を1人で切り盛りしてきたるり子さん。体力の限界を迎えていました。 母・長瀬るり子さん:「私じゃできないことがいっぱい出てきました。年齢的なものと、そろそろ(息子に寮の経営に)入ってもらってもいいかなという気持ちがあった」 また、徐々に学生の数が減り、長瀬さんが経営を引き継いだ時には、全部でおよそ210ある部屋の6割程度しか埋まっていませんでした。そこで、築30年を超えた建物の内部をリフォーム。新たにホームページも作りました。 これが功を奏し、入居率は3年間でおよそ9割まで改善しました。しかし、3年前から地元の大学の一部が札幌に移転し、新たな課題に直面しています。 長瀬祥治さん:「今までは大学におんぶに抱っこでしたので、その点では札幌学院大学が新札幌に半分移転してしまっている打撃は正直あります。打撃もなく、独立して自立した会社になるためにも、新たな一歩を展開していきたい」 長瀬さん:「ご案内します。こちらは以前、祖父母が住んでいた場所なんですけれど。寮の一角を利用して「cafe&bar 大麻」という名前で、昨年の10月オープンさせました」 全面エメラルドグリーンの壁に好きなアーティストの作品が並ぶ、長瀬さんこだわりの内装です。 長瀬さん:「自然が好きじゃないので、自然っぽくなさ、都会みたいな感じ。でも、庭がありますので、そういったところで共存できるように」 寮の朝食と夕食を作る時間帯を避け、カフェのランチ営業のほか、週3日程度、夜のバーも開いています。 オープンから1年。学生の利用は多くありませんが、地域に住む人たちの交流の場になっています。 (車を運転する長瀬さん) 長瀬さん:「(Q.どこに向かうところ?)江別の芝木農園ですね。寮は内向きの商売で、開けている商売ではありませんので、カフェをすることによって、江別の方々と交友関係を広げられたかなと思います」 訪ねたのは、カフェを始めてから知り合った農家の芝木達也さん。 長瀬さん:「あ、白菜だ。きれいだね」 今では、寮で使う新鮮な野菜を時々提供してくれる仲です。 長瀬さん:「最初は農家さんだと知らなくて。ただのDJの人というイメージ。実は…みたいな感じ。江別の野菜を使って、江別に根を張った企業でありますので、そういったものを出せるのは一つの喜びですね」 芝木達也さん:「20代、10代のときの味覚、食べた物で、30代以降の好みって変わってくると思うんですよね。新鮮な物や地場産を意識してもらえれば、またちょっと違うんだろうなと。食育をやっているわけではないですけれど、そこに通じるような気がします」 この日、「cafe&bar」の1周年イベントが開かれていました。常連客でにぎわう中、農家の芝木さんもDJとしてイベントを盛り上げます。 常連客:「最高でしかない。店主が何の話でも盛り上げてくれるので、笑って終わる」「若者が来やすくて、カルチャーが生まれる場所はあるべき。よく作ってくれたなと思います」 そこには、長瀬さんの母・るり子さんの姿も。 長瀬るり子さん:「地域のためにこんなに皆さんが集まってくれるカフェバーを作ったことは、良かったと思っています」 長瀬祥治さん:「祖父が開いてくれた場所ですから、このまま継続してこの場所を守り続けていきたい。それは僕の役目だと思っています」 祖父の代から続く学生寮を立て直そうと、経営を引き継いだ長瀬さん。その挑戦は続きます。
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