当時とほぼ変わらない完成度の高さ! 世界中のDJやレコード好きから愛されるターンテーブル。
各界のプロの審美眼にかなった、いま旬アイテムや知られざる名品をお届け。 小学校の卒業祝いに母親に買ってもらったビートルズのオリジナルアルバムを編集した、8枚組レコードのボックスセット。大好きな曲がたくさん入っていたけど、なかにはそうでもない曲もあった。なので、その中から好きな曲だけを集め、90分のカセットテープに編集した。これが初めての選曲作業だったと思う。おそらくそれがきっかけとなり、大学生の頃には学祭でDJを始めるようになった。そのときに使っていたのがテクニクスのSL 1200MK2で、これはDJ文化を黎明(れいめい)期から支え続けてきたレコードプレーヤーなのだが、2000年代前半には、レコードはすっかりデジタル音源に押されて下火になり、 年にテクニクスブランドは撤退。多くの音楽好きな友達もレコードを手放していった。 しかしモノとしての存在感と温かみのある高音質が再評価され、今ではタワーレコードの売り場にもレコードコーナーが復活。老若男女問わず、多くのアナログ好きでにぎわっている光景は、なんともうれしい限りだ。SL 1200MKシリーズは忘れ去られそうになりながらも、14年にHi Fiオーディオブランドとしてテクニクスが復活し、19年にさらに高音質化に設計し直され、最新モデルが発表された。いまだに世界中のDJやレコード好きから愛されている証しだろう。 僕は初めて使ってから35年も経つけど、シンプルで機能的で洗練されたそのデザインは、当時とほぼ変わっていない。きっとこれ以上のデザインと機能性は生まれないのでは?と思えるほど、完成度が高い。これぞまさしく自分にとってのロングライフデザインだと思う。 文・小林 恭 Takashi Kobayashi 設計事務所imaをパートナーのマナと共同主宰。空間の印象に影響を与えるBGMもインテリアデザインの一部とし選曲を開始。9h woman shinjukuやLA MAISON SHIGETAの設計とBGMを担当。 Photograph: Ryohei Oizumi Styling: Hidetoshi Nakato(TABLE ROCK.STUDIO)
朝日新聞社