置かれた立場の違いに戸惑い 13年後に再び震災経験した24歳 能登の復興と漆職人目指す思い強く 岩手
岩手めんこいテレビ
13年の時を経て再び震災を経験することになった24歳の今野風香さん。2つの大きな地震を通じて彼女の心に芽生えた複雑な思いと、漆塗り職人になるため伝統工芸に向き合う姿を追いました。 能登半島地震の発生から1年の2025年1月1日。 被害が大きかった石川県輪島市では追悼式が開かれ、犠牲になった人たちに祈りがささげられました。 この日、能登から約450キロ離れた岩手県で能登を思い新年を迎えた女性がいます。大船渡市出身の今野風花さん、24歳です。 陸前高田市の竹駒神社に参拝し「去年みたいな大変なことは起きないようにと、途中でくじけずに頑張れますようにと願った」と話しました。 今野さんは、宮城県仙台市の大学で美術を専攻するうち漆の職人を志すようになり、現在は石川県輪島市の技術研修所に入って、輪島塗などの伝統技法を学んでいます。 2023年に研修所に入学した今野さんだが、能登半島地震が発生したのは大船渡市の実家に帰省した時でした。 今野風花さん 「つい先週までそこ住んでいた、私そこいたよねって思ってびっくりした。正直なんでまたこんな震災に関わっているんだろうと思った時はあった」 今野さんは小学5年生の時に東日本大震災を経験し、自宅や家族は無事だったものの生まれ育った街が傷ついた姿を目の当たりにしました。 その13年後に再び震災を経験することになった今野さん。自分の置かれた立場の違いに戸惑いを感じていました。 今野風花さん 「東日本大震災は当事者というか、自分が被災者。今回(能登)は発災直後はいなかったしライフライン整ってから戻った人間だったので、負い目みたいな後ろめたさみたいな不思議な感じはある、いまだにちょっと」 震災で今野さんが通っていた研修所は建物に亀裂が入るなどの被害を受け、そのまま休校となりました。 学校が再開するまでの間、岩手県内の漆職人を通して作品作りを続けていましたが、被災地にいることが出来なかった自分に対し複雑な思いを持ち続けていました。 今野さんの気持ちに変化が出てきたのは、授業が再開し同級生とともに切磋琢磨する日々に戻ることができた頃でした。 漆作品を発信することで「輪島の復興」を応援したいと考えるようになり、12月7日、研修生の有志と一緒に展示会を企画。今野さんは、箸やストラップなど20点を出品しました。 お客さん 「地震があって大変だったと思うけど、自分の作品を作り続けてすごいと思うしこれからも頑張ってほしいと思っている」 多くの人が漆に触れる機会になり今野さん自身も能登の復興と漆塗りへの思いがさらに強くなったと話します。 今野風花さん 「こんな応援されることなんて、なかなかないのですごくうれしいです。頑張ります、本当に」 休校した分の授業を2024年12月で終え、今野さんは無事2年生に進級。これからの1年は卒業に向けて制作活動に励みます。 この正月、地元に帰って英気を養った今野さんは、新たな決意で能登へ旅立ちます。 今野さんは「(能登は)地震があって少し離れる期間があったからこそ、どんどん思い入れが深い場所にはなっていっている。(漆は)一生付き合っていきたいものなので、仕事として続けていきたいので真摯に向き合って行けたらいいなと思う」と漆塗りへの熱い思いを語った。
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